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「立ち直れず」自己破産 津波被災、年金暮らし男性 東日本・災害援護資金 


「立ち直れず」自己破産 津波被災、年金暮らし男性 東日本・災害援護資金  仙台市の災害公営住宅に1人で暮らす男性。災害援護資金などの返済ができず、自己破産した
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 自宅も職場も津波に流された。仙台市の災害公営住宅に1人で暮らす無職男性(68)は、災害援護資金などの返済ができず昨年春に自己破産した。「自力で立ち直れと言われても難しかった」。心臓病を患っており現在の収入は年金だけだ。 (1面に関連)
 東日本大震災が起きたあの日、男性は仙台市の自宅近くで被災した。水産加工会社で働いていたが収入が全くなくなった。生活保護を受け市から災害援護資金50万円も借りた。
 約2年後に災害公営住宅に入居した。妻は脳梗塞の影響で介護が必要だった。施設に妻を預けながら、運転手などの職に就いた。長時間働けず施設も職も転々とせざるを得なかった。「本当にぎりぎりの生活だった」
 市から支払い督促が来たが返すあてはなかった。支払期日を延長してもらった。60歳を過ぎて仕事を辞め収入は年金のみに。妻は2019年に亡くなった。「人生結構不幸続きです。妻の最期まで一緒に過ごせたことがいい思い出です」。気丈に振る舞うが震災は男性の人生を大きく変えた。
 昨年春ごろから再び督促が来るようになった。月3千円の少額返済に変更したが完済まで長期に及ぶ。灯油代、電気料金も値上がりした。「もう無理だ」。自己破産を裁判所に申し立てた。
 震災直後は将来のことは考えられず、災害援護資金を借りるしかなかった。「私のような思いをする人がいないよう自治体は根本的な支援をしてほしい」と訴えた。
 
貸し付けでなく 給付型の創設を
 関西大の山崎栄一教授(災害法制)の話 滞納額がこれほど膨らんでいる状況で今後被災者が返済できるとは思えず制度自体が破綻している。返済期日をいくら延長しても全額は回収できないだろう。家も仕事も失った被災者に資金を貸し付けるのではなく、避難生活や生活再建のために資金の用途を拡大して給付する新たな制度を創設すべきだ。