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SNS投稿の岡口判事罷免 弾劾判決 表現の自由「限度逸脱」


SNS投稿の岡口判事罷免 弾劾判決 表現の自由「限度逸脱」 岡口基一判事
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 交流サイト(SNS)への投稿で殺人事件の遺族を中傷したなどとして訴追された仙台高裁の岡口基一判事(58)=職務停止中=の弾劾裁判で、裁判官弾劾裁判所(裁判長・船田元衆院議員)は3日、岡口氏を罷免する判決を言い渡した。SNS投稿などの表現行為を理由とした判断は初めて。事件遺族の名誉を毀損(きそん)したと認め「裁判官としての威信を著しく失うべき非行」と結論付けた。
  (6面に関連)
 弾劾裁判による裁判官の罷免は約11年ぶりで、1947年の制度開始以降8人目。不服申し立てはできず退職金は出ない可能性が高い。最低5年間は法曹資格を失い、弁護士にもなれない。船田裁判長はまず、罷免理由の「非行」に当たるかどうかは「裁判官に対する一般国民の尊敬と信頼」を基準にすべきだと判示し、一連の表現行為は非
行に該当すると認定した。
 岡口氏が遺族からの抗議などを受けても投稿などを執拗(しつよう)に繰り返し、遺族感情を傷つけた点に関し「表現の自由として裁判官に許容される限度を逸脱した」と指摘。特に遺族に対して「俺を非難するよう東京高裁に洗脳されている」と書き込んだことは、「遺族の社会的評価を低下させ、名誉を傷つけた責任は極めて重い」とした。
 過去に罷免された7人は重大な職務違反のほか、児童買春や盗撮など刑事罰に問われたことが理由で、今回は法曹界や識者の間で裁判官の「表現の自由」の在り方など
を巡り意見が割れていた。
 岡口氏は2015年に東京都立高3年の岩瀬加奈さん=当時(17)=が殺害された事件に関する投稿など計13件に関し、国会の裁判官訴追委員会から21年に訴追された。
 投稿の中には「首を絞められて苦しむ女性の姿に性的興奮を覚える性癖を持った男」「そんな男に、無惨にも殺されてしまった17歳の女性」とする内容も含まれ、判決文を閲覧できるリンクも記載された。
岡口基一判事