浦添市の当山こども園で8日、入園式が開かれた。30人あまりの新入園生の中には、医療的ケアを必要とする當間奏斗ちゃん(5)が、両親と笑顔で参加する姿もあった。市は2024年度、2人の医療的ケア児をこども園で初めて受け入れる。奏斗ちゃんは「みんなと遊んだり、勉強したり、頑張りたい」と園での生活に期待を膨らませた。
奏斗ちゃんは母のかすみさん(34)のおなかの中にいるときに、本来二つある心室が一つしかない「単心室症」と診断された。生後5日目に、左心室だけで血液の循環ができるよう心臓手術を受け、2歳までに計3度手術を受けた。心臓手術の際に声帯まひになり、気管を切開してカテーテル(管)を挿入した。
手術が一段落し、かすみさんは3年前、奏斗ちゃんを保育園に通わせることができないか、市に相談に行ったが、「医療的ケア児は園に入れない」と断られた。しかし、昨年、奏斗ちゃんの主治医に「この子は支援学校ではなく、地域の学校への進学が良い」と勧められ、再び市に奏斗ちゃんの就園を相談した。
奏斗ちゃんともう1人同年代のニーズがあると知った市は、医療的ケア児の保育施設への入園に向け動き出した。市は継続的な医療的ケア児の受け入れを視野にガイドラインを策定。実際に動き出すと看護師が3月末まで見つからないなど、困難もあったが、2人の就園が実現した。担当課の職員は「ようやく軌道に乗ろうとしている。まずは5歳児が優先になると思うが、ニーズがあれば可能な限り、今後も対応したい」と話す。
奏斗ちゃんの父の隆太さん(34)は入園式で、楽しそうに童謡を歌う息子と妻の姿に、思わず涙ぐんだ。隆太さんは「人生が豊かになるような、集団での体験をたくさんしてほしい。自分のことを自分で話し、分かってもらえるよう、人間関係の作り方を学ぶ場になれば良い」と話す。
かすみさんは「園に入ることができて、うれしい。けんかも含めて、友だちとできる経験を全て楽しんでほしい」とほほ笑んだ。
(藤村謙吾)