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【識者】戦前の皇国史観をほうふつ 令和書籍の教科書 新城俊昭氏(沖大客員教授)


【識者】戦前の皇国史観をほうふつ 令和書籍の教科書 新城俊昭氏(沖大客員教授) 新城 俊昭(沖縄大学客員教授)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 令和書籍の歴史教科書は、戦前の皇国史観をほうふつとさせる内容になっている。

 アジア太平洋戦争の終戦を巡り、1945年8月の「昭和天皇の御聖断」が強調されているが、同年2月に近衛文麿元首相が降伏を促した「近衛上奏文」の時に決断していれば、沖縄戦はなかった。沖縄からすると「遅すぎた聖断」だった。

 「沖縄への心残り」など天皇の考えを代弁したコラムが目立つが、天皇制の下で住民の多くが犠牲になったことや、戦後も連合国軍総司令部(GHQ)に沖縄の長期軍事占領を望む「天皇メッセージ」を発したことについては全く触れていない。沖縄の反発や、現在に続く米軍基地の問題も書いていない。

 琉球処分や日本復帰などを巡っても、沖縄の立場を無視し、日本政府の論理だけで書いてある。琉球人と日本人の祖先が同じだという「日琉同祖」論をやたらと強調し、沖縄の独自性や主体性を押さえつけている。

 戦後の教育は皇国史観の否定から始まったが、再び戦前のように国家主義的な内容が強まっている。令和書籍の教科書はその象徴だ。「台湾有事」の防波堤として軍事強化が進む中、「沖縄に基地があっても仕方がない」と子どもたちが思わないようにどう歴史を教えるか。沖縄の教育界の力量も問われている。

 (琉球・沖縄史教育)