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【深掘り】大切なのは、幸福に暮らせるかどうか 消滅自治体ゼロ 山内昌和氏(早稲田大教授)


社会
【深掘り】大切なのは、幸福に暮らせるかどうか 消滅自治体ゼロ 山内昌和氏(早稲田大教授)  山内 昌和氏(早稲田大教授)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

沖縄県内では消滅可能性のある自治体がゼロだった。その理由は全国に比べ、年齢構成が若いからだ。加えて県外に出る人が多いものの、Uターン者やIターン者が多いので、若者がそれなりに残ることになる。さらに出生率も高い。2014年の結果との違いは、当時考えられていたよりも、人口の減少が緩やかになったことを反映しているからであろう。

 沖縄県全体でみれば、全国と同じく人口減少に向かう流れにある。人口の集中する本島中南部や宮古島、石垣島では顕著ではないものの、本島北部やその他の離島では、人口減少が進みやすい。このように特定の地域に人口が集中する傾向は、世界中で見られるものである。

 一般に社会減対策は難しい。というのも、原則としてどこに住むのかは人々が自由に決められる方が良いからである。子どもを持つかどうかも同じだ。大切なのは、その地域に住む人々が幸福に暮らせるかどうかである。幸福に暮らせる地域であれば、人口の多寡にかかわらず、今後も地域は維持されうる。

 人口の数だけを考えれば、極端な場合、軍事施設を大量に造って拠点化すれば良いのかもしれないけれども、そこに暮らす人々の幸福は実現されるのであろうか。自治体が消滅する可能性を議論することにも意味はあるが、まずは、それぞれの自治体に住む人々がいかに幸せに暮らせるかを軸に考える必要がある。

(談、地理学)