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被災の名車 奇跡の復活 11年紀伊半島豪雨、弟の形見


被災の名車 奇跡の復活 11年紀伊半島豪雨、弟の形見 ギャランGTOと記念写真に納まる(手前左から)中平幸喜さんの息子史都さん、兄の敦さん、中村進太郎さん=29日午後、和歌山県新宮市
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 2011年の紀伊半島豪雨で被災した和歌山県那智勝浦町を29日、1970年代の名車「ギャランGTΟ」が軽快に走った。豪雨で亡くなった中平幸喜さん=当時(45)=の愛車だ。車は被災し長年そのままだったが、兄の敦さん(65)の友人とその「車仲間」が約4年かけて修理し、奇跡の復活を遂げた。
 幸喜さんは大の車好きで、中古車販売店を営みながら妻と3人の子どもと那智勝浦町で暮らしていた。5人は避難しようと外に出た瞬間、家ごと濁流にのみ込まれたという。唯一残った形見が別の町の店にあった73年式三菱ギャランGTOだった。
 ギャランも豪雨で水没。敦さんは修理屋を片っ端から回ったが「直すのは絶対に無理」と言われ続けた。9年が過ぎたころ、修理を申し出たのが敦さんの友人中村進太郎さん(41)だった。
 中村さんも車好き。全国の同好の士を頼りながら、約4年かけてギャランを復活させた。「同じ型の部品を探すのにとても苦労した」といい、泥を全て落とし、ハンドルや鍵穴は元のものをそのまま使用した。
 29日午前、中村さんが運転するギャランは幸喜さんの自宅跡地へ向かった。助手席には、豪雨当時東京に住んでいて無事だった幸喜さんの息子史都さん(35)が乗車。「エンジンの音まで全く同じ。楽しそうに運転していた父の姿を思い出した」と笑顔で語った。献花し、父に「みんなのおかげで直ったよ」と報告した。