古謝景春南城市長のセクハラ疑惑を受けて、市議会特別委員会が実施した職員アンケートを巡り、本紙の事前報道に反発する与党側が「秘密会の内容を漏えいした委員の懲罰が先だ」などと主張し、結果公表を先送りしている。専修大ジャーナリズム学科の山田健太教授(言論法)は「公共性・公益性が高い報道で、懲罰動議は威嚇行為だ」と指摘している。
与党側が反発しているのは、「古謝市長からキスをされた」という回答の存在を伝えた先月28日付の本紙報道だ。
山田教授は「市長のハラスメントに関わる事案で、公共性・公益性ともに極めて高い」と評価。「秘密会であるか否かに関わらず、公共性・公益性があるものについては、早く正確に伝えることは報道機関の社会的役割だ。むしろ議会が秘密会にして、事実の公表先送りや覆い隠す可能性すらあると判断すれば、できる限り多くの情報を入手し、報じることは報道機関に強く求められる職務だ」と語った。
また、特別委の安谷屋正委員長らが、情報源を確認しようとしている言動については、「ジャーナリストの取材源の秘匿の理解に欠け、ひいては憲法が保障する知る権利を侵害するものだ」と批判した。
その理由について、「取材源の秘匿は、法を超えて守るべきものであることは報道界において国際標準になっている。その一形態である法廷での証言拒絶権も、取材・報道の自由のためとして最高裁も認めるに至っている」と述べた。
また、与党側が一部議員を「情報漏えい元」と断定し、懲罰を求めたことについても、「懲罰と、情報が伝えられる公共性・公益性との比較で、市民にとって何が利益かを考える必要がある。議員の資格を失わしめるような処分を求めることの正当性が問われている。懲罰動議が出されること自体、ハラスメントの実相を伝えようとする者に対する威嚇行為ともいえ、議会の本来の目的とは逆ではないか」と疑問を呈した。
さらに「首長の犯罪の可能性がある行為を明らかにすることは、いわば『広義の内部告発行為』ともいえる。制裁ではなく守るべき対象ですらある」との認識を示した。
(南彰)