有料

島の植物を原料に 八重山上布


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 八重山上布は苧麻(ちょま)という植物から取った細い糸を使う八重山の伝統織物。水流や鳥、ホタルなどの自然や動植物などが絣(がすり)模様としてちりばめられている。糸の染料は八重山の自然を活用し、ヤマノイモ科の紅露(くーる)や藍、福木などを用いる。
 1637年から250年以上続いた、琉球王府による人頭税制度の下、八重山の主に女性は貢納布として上布を納めた。人頭税の廃止後、上布は産業として発展していく。
 特に、絣に紅露の染料の濃縮液を付け模様を作る「捺染(なっせん)」の技法による、捺染上布が主流となった。捺染の上布は海水にひたし「海晒(さら)し」をする。これは県内では八重山のみの方法。糸の色が落ちない「色止め」と、余分な染料を落とし上布の白を際立たせる効果がある。
 捺染の産業化が進む一方、糸を縛って染める「括染(くくりぞめ)」は手間がかかり衰退した。だが、東京の日本民芸館に残されていた八重山の織物に感銘を受けた新垣幸子さんが1973年から織り始め、復活させた。 (照屋大哲)