古謝景春市長のセクハラ疑惑を受けて、南城市議会が策定したハラスメント防止条例は、相談窓口を全て外部に置くという全国的にも異例の内容だ。市議会特別委員会が4~5月に実施した職員アンケートで「古謝市長からセクハラを受けた」という回答が9件寄せられ、「申告がない」とした市の説明が揺らいでいる。条例制定の背景には「何とかしないと市民の不信を解消できない」(与党市議)との危機感がある。
新たなルールができたことは一歩前進だ。ただ、審議は約3時間にとどまり、野党・中立の市議が求めた再審議や有識者からの意見聴取などは拒まれた。拙速な進め方によって、先行自治体の条例にある「目撃・把握した者からの申告」なども抜け落ちた。市議会は市に規則での対応を要請したが、審議に時間をかければ解消できた課題は少なくない。
相談窓口を外部に一本化することに対しても、ハラスメント問題に詳しい弁護士の一人は「画期的ではあるが、市長に近い業者が窓口業務を請け負ったらどうなるのか」と懸念を示している。
特に問題なのは、一連の疑惑の真相解明を先送りしたまま、条例制定を急いだことだ。被害の訴えをうやむやにされてきた当事者からは「被害者が置き去りにされている」と悲痛な声が上がっており、条例制定によって一連のハラスメント疑惑が幕引きになることへの懸念が強まっている。
(南彰)