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「あなたが私のパパですか?」元米兵の父と初対面、自ら撮影しドキュメンタリー映画に 沖縄


「あなたが私のパパですか?」元米兵の父と初対面、自ら撮影しドキュメンタリー映画に 沖縄 太田あきのさん(左)と父のアントニオ・ベガさんが初対面する、映画のワンシーン(提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 嘉手苅 友也

 顔も名前も知らない元米兵の父親と、37歳で初対面した太田あきのさん(38)が、対面するまでの様子を自ら撮影したセルフドキュメンタリー映画「あなたが私のパパですか?」の上映会とトークイベントが7月27日、沖縄市コザのFurizonであった。「胸を張って生きたい」「同じ境遇の人と体験を共有したい」と始めた映画製作は、人種やシングルマザーへの偏見にも向き合うこととなった。

 太田さんは、「ハーフなの?」と聞かれるたびに、父を知らないコンプレックスに苦しめられた。母子家庭で育ち、母の伊波和枝さん(享年56)に父の話を聞くと困った顔をした。親族も父のことを話さない。未婚で米兵の子を産んだ母親とその子どもに向けられるような偏見があきのさん自身の中で膨らみ、ハーフであることは誰にも触れられたくないタブーになっていった。

 夫の悠晴さん(39)から、データベースで親戚を探すこともできるDNA検査の存在を知らされた。長年のタブーにおびえながらも、ルーツに向き合おうと登録した。

 最初にいとこが見つかり、「1985年前後に沖縄に配属された米兵の親族はいるか」と質問すると、父のアントニオ・ベガさん(63)につながり初対面を迎えた。

 父と母が金武町で出会い恋に落ちたこと、妊娠を知らず、部隊移動で別れを告げられないまま去ったことを知った。アントニオさんは「一緒に過ごす時間を失ったことを悔やんでいる。知っていたら一緒にいた」と涙をこぼした。父との出会いでタブーは解消され、あきのさんは前を向くことができた。

 あきのさんは、人種を越えて感想を共有する場として、上映後にトークの時間を設けている。祖父が母に「(相手が)黒人だったら殴る」と、人種差別的な発言があったことに触れた。「未婚の母、戦後のミックスルーツの苦労、人種についても(考えさせられ)、背中を押すドキュメントになっている」と紹介した。

 次回の上映会とトークは、31日午後2時半から糸満市観光文化交流拠点施設シャボン玉石けんくくる糸満で。Furizonでは毎月最終土曜日に定期開催している。詳細はインスタグラム「aki_ameradical」で検索。問い合わせはあきのさん、電話070(3229)2307。

 (嘉手苅友也)