有料

事務職でアスベスト被害、国に2640万円求め提訴 元基地従業員の県内男性、放置責任問い 沖縄


事務職でアスベスト被害、国に2640万円求め提訴 元基地従業員の県内男性、放置責任問い 沖縄 米軍キャンプフォスター北前ゲート(資料写真)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 在沖米軍基地でアスベスト(石綿)を吸引したことで悪性胸膜中皮腫を発症したとして、元基地従業員の男性(79)=県中部在住=が国に2640万円の損害賠償を求めて、那覇地裁沖縄支部に提訴したことが26日までに分かった。原告代理人によると、石綿の健康被害を巡る同種訴訟では遺族による訴訟提起が多く、健康被害に遭った本人が存命中に訴訟に踏み切る事例は少ないという。

 訴訟提起は5月16日付。8月29日に同支部で第1回口頭弁論が開かれる。

 訴状によると、男性は事務職として勤務していたが、部署内での大工作業などで石綿に暴露し、2022年6月に労災認定された。

 男性は1982年4月から2018年12月まで米軍キャンプ・フォスターで勤務。備品や書類の管理を担当した。大工作業が得意だったことから、断熱材として天井や壁に石綿が使われていた建物内で、上司や同僚からの依頼で壁に棚やボードを設置する作業にも従事。天井での作業や、窓のない備品の管理部屋への出入り時にも石綿の粉じんを吸い込んだという。男性は21年8月に悪性胸膜中皮腫と診断され、22年6月に労災認定されたとしている。

 訴状では、国と米軍は、防じんマスク配布などの安全対策や安全教育、健康診断の実施など安全配慮義務を怠ったとし、日米地位協定に基づく男性の雇用主に当たる国に損害賠償を求めた。

 原告代理人の大島優樹弁護士によると、石綿の健康被害は建設現場での被害事例が多く、基地内での内勤経験者が訴訟に踏み切るのは異例という。大島弁護士は「在沖米軍基地内での基地従業員の石綿被害は職種を問わずに長期間続いた。石綿の危険性を放置した国の責任を問い、男性の早期の救済につなげたい」と述べた。