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「アスベスト(石綿)が出れば解体費用が桁違いになると言われた。どうにかならないか」。読者からの電話をきっかけに取材をすると、大気汚染防止法改正による規制強化の深刻な影響が浮かび上がってきた。外壁でアスベストが検出されると、建物をシートで覆うなどの対応が義務づけられ、工費も工期も数倍に。解体の断念や、規制を無視した「違法解体」も起きているという。健康被害の心配とともに、助成金の必要を訴える声が広がっている。
電話の主は本島中部の男性(78)。築51年の3階建てアパートを所有し、解体を業者に相談した。かつて400万円程度と聞いたというが、天井や床、外壁などのアスベスト対応で1000万~2000万円になる場合もあると告げられた。「国の規則通りに造ったのに高額の負担は納得できない」と憤る。
2021年施行の大気汚染防止法改正で、全てのアスベスト含有建材が規制対象となり、罰則も強化。外壁のアスベスト含有が判明すると、建物をシートで覆い、手作業で研削した上で解体することに。工費も工期も数倍になったという。
一方で規制強化に伴う公的補助は皆無。事前調査も飛散対策も費用は施主の負担だ。複数の自治体担当者が「補助の問い合わせはある」と認めつつ「国の制度もなく、対応できない」とする。
(宮沢之祐)
アスベスト(石綿) ごく細い繊維からなる天然鉱物で、安価で断熱性や耐火性に優れ、建材に多用された。粉じんを吸い込むと10数年から50年の潜伏期間を経て肺がんや中皮腫を発症する恐れがある。2005年、兵庫県尼崎市のクボタ旧神崎工場の元従業員や周辺住民に中皮腫が多発していることが発覚。06年、製品の使用や輸入、販売などが原則禁止となった。