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「ぼったくりと言われた…」連絡途絶える施主、違法な解体も アスベスト規制強化、業者ら「公的補助」求める<りゅうちゃんねる>


「ぼったくりと言われた…」連絡途絶える施主、違法な解体も アスベスト規制強化、業者ら「公的補助」求める<りゅうちゃんねる> シートで覆い、壁面のアスベストを研削する作業 (神里工業提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 宮沢 之祐

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400万円のはずが1000万円以上に…解体費も工期も「数倍」、助成金はゼロから続く>>

 建設業者を訪ね歩くと、大気汚染防止法改正後の解体費について「施主に納得してもらうのが大変」「ぼったくりと言われた」といった嘆きが聞かれた。詳しい手法は聞けなかったが、アスベストが検出されないように「工夫」したという業者も。「施主がとても払える額ではないから」と漏らした。

 沖縄市の解体工事会社で石綿含有建材調査者の資格を持つ男性は、アスベスト検出後、施主からの連絡が途絶えるケースを何度か経験した。別の業者がアスベスト対応をせずに解体した。こうした風潮に「作業する社員を含めみんなを守るために対応は必要。違反は発注者が罰則対象になり、お客さんにも迷惑をかける」と警鐘を鳴らす。

建材のアスベスト含有を調べる事前調査の検体

 保健所はパトロールに力を入れる。中部保健所は昨年度、のべ905件に立ち入り、工事内容の掲示の大きさなど94件の行政指導をした。重大な事案は減ったというが、調査の限界もある。「工事の発注者への啓発をしたい」と担当者。解体のピークは2028年とされる。

 アスベストは建設や造船に欠かせない建材として日本の高度成長を支えた。1950年代ごろから使われ始めた。一方で、建設現場でアスベストを吸い、肺がんや中皮腫を患う事例が明るみに出て、法規制は年々厳しくなってきた。2022年には事前調査結果の報告、23年には有資格者による事前調査も、それぞれ義務化された。

 業者らが一様に求めるのは助成金の創設だ。「高度成長期に建った建物の所有者は、高額の負担は難しい高齢者が多い。放置され、老朽化する空き家が増えれば、まちづくりの足かせになる」との指摘も出る。

 電話をくれた読者は、その後、体調を崩し、解体をためらう。「補助しない国は無責任」と繰り返し「負担を考えると踏み切れない」と力なく語った。

 (宮沢之祐)