プロとアマチュアの写真家を対象にした神奈川県相模原市の総合写真祭「フォトシティさがみはら2024」の受賞者が30日に決まり、プロの部で最高賞に当たる「さがみはら写真賞」に米統治下の伊江島で非暴力の土地闘争を続けた故阿波根昌鴻(あはごんしょうこう)さんが選ばれた。阿波根さんが撮影した写真を紹介した企画展「写真と抵抗、そして島の人々」が評価された。
同展は、埼玉県にある原爆の図丸木美術館で2月23日~5月6日に開かれた。2002年に死去した阿波根さんは沖縄戦後、米軍に占領された伊江島で農民たちと共に非暴力の土地闘争を行った。「銃剣とブルドーザー」と呼ばれた強制的な土地接収や米軍の横暴などによる被害を記録するためにカメラを入手し、1955年から島の記録を始めた。82年には、生前、唯一の写真集となった「人間の住んでいる島」を出版した。
受賞した写真展は県外では初となる展覧会で、阿波根さんが収蔵していた3千枚以上のネガから新たに高精細にデジタル化しプリントした約350点を展示した。
同展のキュレーターで東京工芸大学准教授の小原真史さんは「外から撮りに来る人はいるが、共同体の内部から記録者が出てくるのは珍しい例だったはずだ」と指摘。「銃剣とブルドーザーという言葉も知らないであろう県外の方々にも、写真を通して今も地続きな沖縄の実相を知ってもらいたい」と述べた。
10月以降に受賞展のほか、京都や東京都内で巡回展が行われる。
(当銘千絵)