那覇市首里山川町で29日、不発弾処理が実施され、約1400人が避難対象となる。不発弾の処理件数は8月に4万件を超えたが、県内の不発弾全てを処理するにはあと100年はかかると言われている。戦後79年がたっても戦争の爪痕が住民生活に影響を及ぼしている。
首里山川町で昨年12月に発見された米国製250キロ爆弾は、幅4~5メートルの道路の地下にあった。住宅密集地にあるため、ピラミッド状に土を盛ってその中央に金属製ライナープレート(防護壁)を設置する「強固な処理壕」を設置できなかった。そのため、道路が交差する場所に、地上を含めた深さ6メートル、幅3メートルの縦穴を一部手作業で掘った。
発見場所の広さに合わせてライナープレートのみの「簡易な処理壕」で処理する方法も議論されたが、避難対象地域が半径700メートル規模、避難対象者数も2万人以上になる上に、事故が起きた場合の影響も甚大になるため、見送られた。
那覇市防災危機管理課によると、採用した地下処理壕は前例がないため業者選定などが難渋し約9カ月かかったという。加えて、市が捻出する費用も膨れあがった。
今回の処理費用の見込み額は約2千万円。市によると不発弾処理費用は通常、国が9割、県と市町村で残り1割を負担する。ただ、今回は異例の処理方法となったため、市側は処理壕整備による影響調査費用など市独自で約450万円を負担することになった。
避難対象区域283メートル内にある事業者は業務停止に伴い損失が生じるものの、行政側で補償する制度はない。
知念覚那覇市長は「不発弾はわれわれの世代で処理しないといけない負の遺産。経済的影響があるたびに心苦しく思うが、地道に対処していくしかない」と話した。
(嘉陽拓也)