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「会期前競技」で日程分散 宿泊、輸送需要集中避ける 開催地の負担軽減課題 過渡期の国民スポーツ大会


「会期前競技」で日程分散 宿泊、輸送需要集中避ける 開催地の負担軽減課題 過渡期の国民スポーツ大会 国体から国スポの流れ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 5日開幕の国民スポーツ大会「SAGA2024」は国民体育大会から名称変更して初めての本大会を迎えた。開催地の負担軽減を求める声が相次ぎ、抜本的な改革に向けた議論が始まった中、今大会も競技日程の分散を進めるなど新たな在り方を模索する。一方で大規模投資は継承している面もあり、過渡期に意義と課題を見つめ直す機会となりそうだ。
 開幕を前に行われた1日の記者会見で、佐賀県の山口祥義知事は「単なる名称変更に終わらせてはいけない」と強調した。「教育、体育として位置付けられてきたスポーツをもっと楽しんで、みんなの力に変えていけるようにしたい」と述べた。
 大会では地元の負担を減らしつつ、魅力を高める方策を取り入れた。5~15日の本大会に先立って実施する「会期前競技」の数を増やし、9月から2段階で実施。集中開催方式で大きな懸案となっている、宿泊や輸送需要の分散化を図った。
 住民の観戦機会を広げるため「ナイトゲーム」を行い、アルコールを提供する試みも実施。最先端施設として注目を集める新設の「SAGAアリーナ」では、飲食や特典の付いた「ホスピタリティプログラム」も導入され、バレーボール成年女子決勝を1人5万円で販売するという野心的な企画にも乗り出した。
 大会の名称変更は「体育」から「スポーツ」への改称が進む近年の流れに沿い、2018年に決まった。スポーツが学校体育の枠を超えて広がる状況を踏まえたもので、戦後に各地のインフラ整備とスポーツ振興に寄与してきた大会の在り方も転換点にある。
 大きな課題の一つが財政負担だ。関係者によれば、近年の開催地の施設整備や運営経費は200億~600億円程度。改革に向け議論を始めた日本スポーツ協会の有識者会議に対し、全国知事会は「式典・競技会開催費」の半分以上を国や日本スポ協に負担するよう求めている。
 佐賀県はSAGAアリーナの建設に257億円を投じ、近隣の陸上競技場やプールなどを含め「サンライズパーク」として整備した。大会を契機とした巨額の公金支出を疑問視する声もあったが、山口知事はスポーツ文化を軸とした街づくりへの投資だと強調。国スポ成功は最終目標ではなく「あくまで通過点。佐賀から新たなスポーツシーンを切り開く」と訴えている。