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望まぬ改姓、人生に揺らぎ 選択的夫婦別姓 保守系議員 反対根強く 賛成世論拡大「国会議論を」<衆院選・争点の現場から>1


望まぬ改姓、人生に揺らぎ 選択的夫婦別姓 保守系議員 反対根強く 賛成世論拡大「国会議論を」<衆院選・争点の現場から>1 婚姻届(イメージ)
この記事を書いた人 Avatar photo 前森 智香子

 発言の変遷にも、驚きはなかった。自民党総裁選で選択的夫婦別姓制度の導入に前向きな考えを示していた石破茂首相が、就任後は慎重姿勢に転じた。「岸田文雄前首相もそうだった。あの時がっかりしたので、就任前の発言はもう信用していない」。衆院選公示前日の14日、沖縄市の会社員、砂川智江さん(47)は淡々と語った。

 日本では結婚後の夫婦同姓が義務付けられている。望まぬ改姓により、旧姓使用の煩雑な手続きを強いられたり、アイデンティティーの喪失を感じて苦しんだりする人は多い。選択的夫婦別姓制度を巡っては、法相の諮問機関「法制審議会」が1996年に制度の導入を含む民法改正案を答申した。だが、保守系議員の反対が根強く、法案は提出されていない。

 9月の総裁選では、小泉進次郎元環境相らが導入に意欲を見せ、争点の一つに浮上。石破首相も前向きだったが、就任後は「さらなる検討が必要」と発言を後退させた。27日投開票の衆院選公約では、公明党が導入推進を、立憲民主党や共産党、国民民主党、れいわ新選組、社民党が実現を掲げる。自民党と日本維新の会は公約に盛り込まず、参政党は反対している。

 結婚で改姓し、「人生の連続性に揺らぎを感じた」という砂川さん。制度導入を切望する県内在住者らによる任意団体「選択的夫婦別姓・陳情アクション沖縄」を2020年12月に設立し、共同代表を務める。「別姓が選べるようになっても、誰にも迷惑をかけない。個人の尊厳に関わる問題なので、法制化を急いでほしい」と訴える。

 砂川さんと共に共同代表を務める眞鶴さやかさん(38)は、今年6月に経団連が制度の早期実現を提言したことにも触れ「注目度が上がり、賛成の世論は大きくなっている。もう一押しで実現するのでは」と前向きに捉える。団体の設立前、自身が暮らすうるま市の議会に請願を提出。全会派を回って説明を重ねた。うるま市議会は19年10月、県内で初めて、制度の導入を国に求める意見書を可決した。

 結婚して改姓するのは約95%が女性だ。眞鶴さんは19年に結婚し、夫が改姓した。夫の家族に改姓を納得してもらうのに約3年かかり「女性だけの問題ではない」と指摘する。自民党内でも賛成派はいるとし「法案採決時に党議拘束を外せば、可決できると思う。改正法案を国会に提出して議論し、一刻も早く法制化してほしい」と望んだ。

 (前森智香子)

 衆院選が15日、公示された。暮らしや子育て、基地問題など、争点の現場に立ち、県民の思いを取材した。