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「候補者が描く未来像知りたい」浦添西海岸・軍港移設 埋め立て巡る議論は低調<衆院選・争点の現場から>3


「候補者が描く未来像知りたい」浦添西海岸・軍港移設 埋め立て巡る議論は低調<衆院選・争点の現場から>3 透き通った海の先に見える、那覇軍港移設に向けたボーリング調査のための台船=19日、浦添西海岸
この記事を書いた人 Avatar photo 藤村 謙吾

 米軍那覇港湾施設(那覇軍港)移設先の浦添西海岸は、沖縄本島の南西に位置し、那覇空港から車で約20分の場所にある。都市部に近いがサンゴが見られ、多様な生物が生きる藻場が形作られた、貴重な自然環境が広がる。那覇軍港移設計画はその海を約49ヘクタールを埋め立て、約3・9キロと約500メートルの防波堤を整備する。8月からは、海に工作物を打ち込むボーリング調査が始まった。

 移設先の浦添市は衆院選2区。同区の候補者は15日の公示後初の街頭演説で、同じ2区の宜野湾市にある普天間飛行場の移設問題や安全保障問題に触れたものの、那覇軍港移設には言及しなかった。

 那覇軍港移設はこれまで、浦添市長選をはじめ、前回の衆院選でも大きな争点の一つだった。今回の衆院選は、2022年10月に国と県、那覇市、浦添市が現在の形状で移設計画に合意したこともあり、議論は低調だ。

 浦添西海岸は北側の軍港移設に先立ち、南側で「那覇港浦添ふ頭地区交流・賑わい空間」(民港部分)の埋め立ての環境アセスメントに関する現地調査も開始された。浦添市では民港部分の工事期間を、28年度から34年度の7年間と想定する。

 浦添商工会議所は6月、市に民港部分への人工ビーチ整備を要請した。同地には、牧港補給地区跡地との一体的利用を想定した観光・ビジネス拠点や、クルーザーヨットが停泊できる港湾施設整備が計画されている。商工会役員は「観光客の通過点だった浦添を変える契機になる」と市の経済発展を期待する。

 市内建設会社の幹部は「港ができれば県外、国外から人が来やすくなる。交通網整備が沖縄発展の鍵だ。最近の国際情勢を踏まえると、軍港も大事だ。民港も軍港も建設を進めてほしい」と話す。

 一方、県民有志による「美ら海を未来に残したいうちなーんちゅの会」の大山盛嗣共同代表(48)は、軍港移設問題が衆院選で議論されない現状に「政治の怠慢だ。逃げようとしている。『触れない方がいい』という理由だけで、争点に上げていない」と憤る。同会は22年11月からオンラインの署名活動を開始するなど、埋め立てに向け進む現状に疑問を呈してきた。

 大山共同代表は「国が絡む問題は国政選挙でしっかり議論すべきだ。賛成でも反対でも、候補者が描く未来像を知りたい」と訴えた。 

(藤村謙吾)