prime

花と緑 與崎安喜(80、糸満市) 一般の部 銀賞<2024年度植木光教基金・琉球みどりの文化賞>


花と緑 與崎安喜(80、糸満市) 一般の部 銀賞<2024年度植木光教基金・琉球みどりの文化賞>  イメージ
この記事を書いた人 Avatar photo 外部執筆者

 私は旅が好きで、ヨーロッパをはじめ北欧や南米のボリビア、ペルーまで足を延ばし自然の風景や美しい街並みを見てきた。その中でドイツやハンガリー、オーストリア、スロベニアの国々で気づいたことだが、特にヨーロッパ辺りでは家のベランダや出窓に色々な花が飾られている。人の集まる中央広場では軒並み花が飾られていて周囲が賑(にぎ)わい、道行く人々の目を楽しませてくれる。それどころか街中の街灯にも花が生けられている。花が好きだから花に囲まれた生活を求めているのか、美の共有意識が強いのか? とにかくその素敵(すてき)なライフスタイルに感動した。

 私と妻はテラスの垣根が花いっぱいのカフェに惹(ひ)かれて入った。大きなパラソルの下でコミュニケーションを楽しむ恋人同士、友人同士、家族連れ。私たちは遠慮気味に片隅の席に座りコーヒーとハンバーグを注文し口にした。テラスの垣根の花をよく見るとそれは色彩豊かなゼラニウムと観葉植物のアイビーだった。その緑と赤のコントラストがまた絶妙で、森の中に赤い花がいっぱい咲いているようで、自分の住んでいる糸満の街も花と緑に囲まれたらどんなに素敵な街になるだろうと思った。

 與崎 安喜

 今、私の家の玄関口にはウバメガシと黒木がどっかりと居座っている。玄関の階段を上がると琉球松とイヌマキ、イスノキ、その奥に大木に成長したブーゲンビレアが威風堂々と開花の時期を待っている。これらの大木は定期的に枝葉を剪定(せんてい)し形を整えている。12、13年前までは中庭に10本の大小のツツジや皐(サツキ)が植えてあり、それが一斉に咲き乱れると我が家の小さな庭が花色に染まってしまうほどだった。朝の静寂なひとときに吹き抜ける風が心地いい。ゆったりとした時間の中で小さな自然の営みに心が癒されていた。

 ヨーロッパ人がベランダや出窓に花を飾り、行き交う人々に安らぎの時間を与えているように、10年前から私も中庭に植えていたツツジや皐を家の道路沿いに移した。また、ブーゲンビレアを3個の鉢に小分けにして移植し、現在、毎年開花している。さらにニンニクカズラ、クロトン、デンドロビウ ム、コリウス、孟宗竹なども植えてみたが今ではかなり成長している。

 道行く人から「ブーゲンビレアがきれいに咲いていますね」「玄関のサンダンカの花とペンタスの花、きれいです」「中に入って見ていいですか」と声をかけられ、「ええ、どうぞ」と小さな庭に案内して「滝」のスイッチをオンにすると、柔らかな滝の音が響いてくる。「おおーっ、びっくりした。ああ、それはいいですね、癒やされますよ」。また、時々遊びに来る友人の照屋さんは「與崎さんの家は門構えがいい。両サイドに花が咲き、奥に行くと灯篭や鹿威(ししおど)しがコリウスとよくマッチしていいね」と言ってくれた。友人や地域の方々とこういう会話ができることをとても嬉(うれ)しく思う。

 後期高齢者になった今、自分の庭に花や緑を増やすことが喜びであり、それが私の住む「大川区」という地域の人々とその喜びを共有することができるならば、なお嬉しい。このように地域の方々と出会い、花や緑について語り合うことで地域の活性化にも結びつくことができるかもしれない。そういう思いで、これからは前向きに「花と緑の街づくり」に微力ながら貢献していきたい。幸い糸満市も「街づくりに関する条例」と、その推進委員会もあるので関係者とお会いして協力をお願いしたい。

 また、私が以前、沖縄県ユネスコ協会の副会長をしていた頃は「御万人(うまんちゅ)すりてぃクリーン・グリーン・グレイシャス(CGG)」運動を県と各市町村が一体となって盛んに実践していた。残念ながら最近はやや下火になっている感がする。だからもう一度、行政と地域が積極的に協働し、このCGG運動を盛り上げていったらどうだろうか。そうすることで「緑豊かな街づくり」が成就することであろうと確信する。  (おわり)