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【深掘り】岸田再改造内閣が発足 防衛強化前のめり 沖縄の基地負担は加速へ 「新興とリンク」流れ続く


【深掘り】岸田再改造内閣が発足 防衛強化前のめり 沖縄の基地負担は加速へ 「新興とリンク」流れ続く
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 第2次岸田再改造内閣には、防衛相に自民党安全保障調査会幹事長の木原稔氏、外相に上川陽子元法相が起用され、沖縄担当相として自見英子氏が入閣した。昨年末の安全保障関連3文書の改定以降、沖縄を含む南西諸島の軍事強化の流れが進む中での内閣改造となった。政府は、5年間で43兆円の規模を示している防衛予算のみならず、内閣府の沖縄予算に「総合的な防衛体制の強化」を掲げたインフラ整備を盛り込む方針。政権の顔ぶれが変わっても、沖縄の基地負担増大の流れはさらに加速しそうだ。

 「私から直接の言及は控えたい」。13日午後、内閣府。退任会見で岡田直樹沖縄担当相は質問をこうかわした。

 内閣府の2024年度沖縄予算の概算要求で、防衛体制強化のための空港・港湾などの公共インフラ整備について、金額を示さない「事項要求」としたことについて記者団から「基地負担と沖縄振興のリンクではないか」と聞かれたが、明確な回答を避けた。

 後任には政務官として岡田氏を支えた自見氏。「予算編成の大枠は固まり、大きな政策の転換はない」(政府関係者)との見通しで、沖縄振興が安保政策と関連づけられる流れは続く。

 一方、防衛政策を統べる防衛相に就く木原氏について、岸田首相は13日の会見で「この分野のエキスパート」と評してみせた。

 2019年から21年にかけて安倍晋三、菅義偉両首相の下で安全保障分野での首相補佐官を務めた経験もあり、昨年末の安保関連3文書の改定にも関わった「防衛族」の一人。自民党関係者も「豊富な経験の持ち主で人格もいい。順当な就任だ」と評価する。

 木原氏はある問題によって沖縄で名が知られるようになった。15年、党若手国会議員有志の勉強会で、出席者から「マスコミをこらしめる」など報道規制につながる意見が相次ぎ、講師として出席した作家の百田尚樹氏による普天間飛行場の成り立ちに関する事実誤認の発言があった問題だ。

 県内の自民支持層からも疑問や問題視する声が上がるなど、大きな反発を招いた。世論の批判や野党の追及を受けて、自民党は関係議員らを処分せざるを得ず。勉強会の代表を務めた木原氏は党青年局長を更迭、役職停止の処分も受けた。

 全戦没者追悼式での首相あいさつ時の怒号に「明らかに動員されていた」と持論を展開したり、普天間飛行場の辺野古移設について地元の民意に対して「永田町の民意(国会の民意)」を持ち出したりもした。

 玉城デニー知事を支える「オール沖縄」陣営の関係者は「辺野古強行をいとわないという意思が示された人事だ。南西諸島の軍事要塞(ようさい)化も前のめりで進めるのではないか」と警戒感を強めた。

 県政与党の県議の一人は「自民党内部の事情との意味しかない」と断じ、「沖縄に対する政策は変わらない。だから岸田内閣に期待は持てない」と突き放した。

(安里洋輔、明真南斗、梅田正覚)