岸田文雄首相が聞く「声」の中に、沖縄の「声」は入っていないようだ。2021年10月に政権を発足させて以降、2度目の内閣改造に踏み切った岸田首相。13日夜に首相官邸で開いた会見で、これまでの政権の歩みをこう振り返った。
「この2年間はまさに国民の声を丁寧に聞き、国民の皆さんと協力しながら新しい時代の扉を開いていく、そうした取り組みを進める毎日だった」。自身の政治姿勢を表す言葉として政権発足当初に多用した「聞く力」を強調した形だ。
しかし、沖縄に対しての態度は違った。
県民の声に耳を傾けることなく政策を断行してきた姿勢が改まる気配は、今回の内閣改造でも示されなかった。
政府は敵基地攻撃能力(反撃能力)を備えた長射程ミサイルの配備、「軍民両用」を見据えたインフラ整備など、沖縄の要塞(ようさい)化とも言える計画を矢継ぎ早に進めている。
新任の木原稔防衛相は、これらの政策の根幹となっている安全保障関連3文書の策定を党内で主導してきた一人だ。
再び沖縄が戦場になるのではないかとの県民の危惧は高まりこそすれ、絶えることはない。岸田首相は会見で「新しい時代を国民の皆さまとともに造っていく」とも語った。政権が目指す「新時代」に沖縄はどう位置づけられているのか。丁寧な説明が必要だ。
(安里洋輔)