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証言整理 崩れた偽装工作 那覇前議長汚職 現金授受の趣旨が焦点に


証言整理 崩れた偽装工作 那覇前議長汚職 現金授受の趣旨が焦点に 身柄を検察に送られる久高友弘容疑者=16日午後3時9分、那覇警察署(ジャン松元撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 那覇市議会前議長の久高友弘容疑者(75)が収賄容疑で逮捕されるなど計5人が摘発された那覇市有地の所有権を巡る贈収賄事件。現金授受は久高容疑者が現職の議長だった2020年12月と、21年2月に市議会議長室であったとされる。

 県警は、今年3月に久高容疑者らが議長室で現金を授受していたとの疑惑が表面化した直後から、疑惑を否定する久高容疑者が現金を受け取っていたとの感触を得ていたとみられる。この間、県警は各容疑者の食い違う証言などを整理し、現金授受の趣旨の解明に力を注いだ。

誰の話が「事実」か

 自営業の女(71)=収賄容疑で逮捕=らによると、3月初旬に授受疑惑が報道された直後から、久高容疑者はその場に同席したが現金を受け取っていないと装うため、5千万円の架空の使途先を仕立てる工作を始めた。

 3千万円の領収証の偽造、知人女性に500万円の借金を返済したという口裏合わせ―。

 だが県警が捜査を本格化させた10月、協力を求められた容疑者の知人らが任意聴取に次々と虚偽事実と認めた。捜査関係者によると、県警は早い段階で久高容疑者らによる偽装工作を把握しており、容疑者らの策が、現金受け取りが濃厚だと証明する格好になったという。

 県警は事実関係の解明に向け、関係者への任意聴取を重ねた。関係者は「(容疑者ら)全員が自分に都合のいいことだけを言っていて、何が本当で誰が事実を話しているのか」と顔をしかめた。

金の「性質」

 贈賄容疑で書類送検された不動産コンサルタント元代表の男性(73)は「久高容疑者への政治手腕への期待だった」と証言。一方、男性に資金を貸し付けたとされる元大物総会屋の男(80)=同容疑で逮捕=はそれを否定した。

 ただ今年1月に那覇簡裁に提出した調停申立書に元大物総会屋の男は、男性から市議会での百条委員会設置に向けた「政治工作費用」として資金提供を依頼されたなどと、自ら記載していた。

 現金の性質についての認識も焦点だ。収賄罪は公職にある人物が、賄賂を受け取って職務に関わる権限を行使することを罪とするもの。自営業の女は公職者ではないが、資金提供に久高容疑者に対する政治工作への期待が込められていたとの認識があったとし、収賄の「身分なき共犯」に当たると県警は判断に至ったとみられる。

 自営業の女は逮捕前の取材に「(贈賄側から渡された)金はあくまで売買契約の手付金だった。久高容疑者がどう金を使ったかは分からない」と話し、賄賂との認識はなかったとしていた。久高容疑者も逮捕後、21年2月に供与された5千万円のうち手元に残った3500万円について「現金は自営業の女から調査費として交付されたもので贈賄側からではない」(代理人弁護士)と、賄賂性を否定している。

 こうした中、捜査関係者は立件に向けて「久高容疑者らの主張などは想定内だ。金を受け取った事実に変わりはない」と自信をのぞかせている。