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【識者】機体の問題残ったまま 米軍オスプレイ屋久島沖墜落 布施祐仁氏(ジャーナリスト)


【識者】機体の問題残ったまま 米軍オスプレイ屋久島沖墜落 布施祐仁氏(ジャーナリスト)  布施 祐仁氏(ジャーナリスト)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 米軍横田基地所属の垂直離着陸輸送機CV22オスプレイが29日、鹿児島県の屋久島沖で墜落した。オスプレイの墜落は2016年の名護市安部沿岸部に続き国内2例目。オスプレイの事故が世界で相次ぎ懸念が高まる中、危険性が改めて浮き彫りになった。一方、政府は16年に続き今回も事故について「不時着水」と言い換えて発表。事故を矮小(わいしょう)化しようとする思惑が透けて見える。

 懸念していたことが起こってしまった。米空軍のCV22オスプレイは昨年8月、クラッチの作動不良(ハード・クラッチ・エンゲージメント)による事故の恐れがあるとして一時的に全ての機体の飛行を停止した。その後、教育・訓練の強化で安全を確保できるとして飛行を再開したが、機体の構造上の問題は残ったままだ。

 さらに奄美諸島では、オスプレイの低空飛行訓練が常態化し、緊急着陸も頻発している。CV22は空軍の特殊作戦部隊で運用されている機種で、敵地へ侵入することを想定した訓練をする。ただの移動ではなく、例えば敵のレーダーに捕捉されないように超低空で飛行するなどの実戦的なリスクの高い訓練をしていた可能性もある。

 2016年の名護市安部沿岸部で発生したMV22オスプレイの墜落事故の時には、当時の岸田文雄外相は米軍に対して事故原因の究明と安全が確認されるまでの飛行停止を求めた。今回も、政府としては最低限でも原因が分かるまでは飛行するなと申し入れる必要がある。16年の墜落事故の際に、米軍は一方的に「機体に問題はない」として6日後に飛行を再開したが、墜落事故は住民に甚大な被害をもたらす危険がある。事故原因すらはっきりせず、国民の不安が解消されない状態での飛行再開はあってはならない。

 事故調査も米軍任せにするのではなく、ヨーロッパなどで行われているように、日米共同の事故調査委員会をつくって原因究明と再発防止を責任を持って進めるべきだ。 (談)