米軍横田基地所属の垂直離着陸輸送機CV22オスプレイが29日、鹿児島県の屋久島沖で墜落した。オスプレイの墜落は2016年の名護市安部沿岸部に続き国内2例目。オスプレイの事故が世界で相次ぎ懸念が高まる中、危険性が改めて浮き彫りになった。一方、政府は16年に続き今回も事故について「不時着水」と言い換えて発表。事故を矮小(わいしょう)化しようとする思惑が透けて見える。
「オスプレイを使っての訓練はただちに中止すべきだ」
墜落を受けて玉城デニー知事は急きょ登庁。記者団に対し、オスプレイの飛行停止を米軍に求める考えを示した。
前兆
オスプレイは2012年の県内配備から11年を迎えたが、死者を出す重大事故が現在も世界で相次いでいる。
22年3月にはノルウェーで墜落し4人が死亡。同6月には米カリフォルニア州で墜落し、5人が死亡した。22年だけで計9人が亡くなった。
カリフォルニア州の事故報告書では「ハード・クラッチ・エンゲージメント(HCE)」と呼ばれる、オスプレイのクラッチ特有の不具合があったことが判明した。
HCEの根本的な原因は解明されていないが、米軍は問題の部品を交換するなど対策をとったとして飛行を継続した。そんな中、8月にはオーストラリアで3人が死亡する事故が発生した。
国内でも何らかの不具合で民間空港に緊急着陸した事例が9、10月の2カ月だけで7機発生。懸念は日増しに高まっていた。
10月17日、日米共同訓練の一環で陸上自衛隊のオスプレイが新石垣空港を使用する計画の中止を求めるため沖縄防衛局を訪れた県の溜政仁知事公室長は「(豪州の墜落事故について)調査中だけど安全には変わらないから飛行しても良いという理屈が分からない」と国の対応を疑問視した。
それから間もなく発生した墜落に、県関係者は「懸念が現実になった」と顔をこわばらせた。
頑張っていた
防衛省は事故について「不時着水」と表現した。宮沢博行防衛副大臣は「最後の最後までパイロットは頑張っていたと米側から説明を受けている」と強弁した。
一方、海上保安庁は当初「墜落」と発表。同じ国内の機関ではなく米軍の説明のみを根拠に事故を矮小化する防衛省の姿勢が改めて露呈した。その後、海保も防衛省に合わせて表現を修正した。
矮小化の意図は事故対応にも及ぶ。県が原因究明までの間の米軍オスプレイの飛行停止を求めたのに対し、政府は現段階で求めていない。
前回16年の墜落時、外相だった岸田文雄首相は、ケネディ駐日米大使(当時)に対し飛行停止などを求めていた。
政府関係者は「今は救助フェーズで、飛行停止を求めるかはその先の話だ」と述べるにとどめた。
南西諸島での軍用機の墜落は今年4月に発生した宮古島沖での陸上自衛隊ヘリに続き、本年度だけで2例目。事故機は嘉手納基地に向かっていた。訓練増加などに伴う危険性が改めて証明された形ともなる。
今回の事故機は東京都の米軍横田基地所属だった。また、千葉県木更津市に暫定配備されている陸自のオスプレイは、今後佐賀空港への配備が計画されている。
知事周辺は「訓練は全国に広がっている。国内どこでも危険性がある。オスプレイの問題をわが事として考えるべき時だ」と強調した。
(知念征尚、明真南斗、佐野真慈)