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【深掘り】米軍オスプレイ、なし崩し飛行容認か 米「安全」、日本「停止」求めず いびつな関係浮き彫り


【深掘り】米軍オスプレイ、なし崩し飛行容認か 米「安全」、日本「停止」求めず いびつな関係浮き彫り 演習の一環でMV22オスプレイから降りる海兵隊員たち。9月に大分空港へ緊急着陸した機体とみられる=1日、キャンプ・ハンセン(米軍サイトから)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 鹿児島県の屋久島沖で米空軍のCV22オスプレイが墜落した事故を巡り、一方的に安全を宣言して飛行を続ける米国政府、それに対して弱腰で飛行停止を求めることさえできない日本政府といういびつな関係が改めて浮き彫りとなっている。県や県内の市町村は原因究明までの飛行停止を求めているが、日本政府がなし崩し的に米軍の飛行継続を容認する可能性が濃厚になってきた。

隔たり

 米軍は空軍のCV22を飛行停止しているが、海兵隊や海軍のオスプレイの運用は止めていない。県内では防衛省の目視調査だけでも事故後から5日までに100回を超える飛行が確認された。キャンプ・ハンセンや県外の基地などでの大規模な演習にもオスプレイを投入している。

 海兵隊のMV22オスプレイ24機が配備されている普天間飛行場を抱える宜野湾市。松川正則市長は事故発生翌日の11月30日に沖縄防衛局を訪れて原因究明まで飛行を止めるよう要請した。それでもオスプレイが飛び続けている現状に松川市長は「普通の事故ではなかったから緊急で要請したが今も市内上空を飛んでいる。どうしたらいいのか」と徒労感をにじませた。

 2016年に名護市安部の沿岸部にMV22オスプレイが墜落した当時、外相だった岸田文雄首相を含めて日本政府は安全が確認されるまでの「飛行停止」を要請し、米軍も飛行を一時的に止めた。

 政府関係者によると、岸田首相は今回も早い段階で「一時停止」を含む対応を米側に求めるよう指示。だが、防衛省などが要請に踏み切ったのは事故から約17時間後で「停止」の文言はなかった。政府関係者によると、防衛省内に米側の運用に立ち入ることを避けるべきだとする意見があったからだ。現実的な危機感に基づいて原因究明までの飛行を止めるよう訴える地元との隔たりは大きい。

疑念

 日本政府が米側に要請したのは「飛行の安全を確認してから飛行するよう」にという内容だ。一方、在沖米海兵隊は5日、日本の全てのオスプレイは「徹底的かつ計画的な整備と安全チェックを受けた後にのみ運用されている」との声明を公表した。

 この情報を受け、防衛省は部局横断的な態勢で、これまでに米側から提供された情報・説明の精査を開始。木原稔防衛相は5日の会見で、米側の説明に納得できれば飛行継続を容認するか問われ「今後の対応については予断を持って答えることは控えたい」と話し、否定しなかった。

 日本政府は過去の墜落事故後も米軍の説明をうのみにして飛行継続や飛行再開を追認した。現時点で米軍は「安全」とする根拠を示しておらず、日本側が主体的に検証できるのか疑問が残る。

 県関係者は「『要請』が無視されていないか」と疑問視する。そもそも、米軍は海兵隊、海軍仕様は飛行停止していない。「配備地からしたら軍種は関係ない。この状態を容認してまた何か起きたらどうするのか」と指摘した。

 (明真南斗、知念征尚、名嘉一心)