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【深掘り】デニー知事、自衛隊で異例の「白紙」要請 防衛相、対応“後手後手感”


【深掘り】デニー知事、自衛隊で異例の「白紙」要請 防衛相、対応“後手後手感” 木原稔防衛相(左)と会談する玉城デニー知事=17日午後5時49分、県庁(小川昌宏撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 うるま市石川の自衛隊訓練場整備計画について玉城デニー知事は17日、木原稔防衛相に「白紙に戻し、見直してほしい」と要望した。玉城知事が自衛隊に関する計画の見直しを求めるのは極めて異例。木原氏は知事会談前の首長らとの面談の途中、事務方に利用方法について再検討を行うよう指示。計画推進に向けたリーダーシップを打ち出したが、玉城知事がさらに踏み込んだことで“後手後手感”が浮き彫りになった。

 「取得後の利用の在り方について、改めて検討するように指示した」

 うるま市長から地元の声を真摯(しんし)に受け止めてほしいと要望を受けた形で木原氏は行動に移した。

■踏み込み

 知事との面談直前には、急きょ報道陣の取材の場を設け「厳しい要望や指摘を重く受け止める」と述べ、指示したことを再びアピールした。

 知事周辺は基地問題を巡って対立する玉城知事と会う前に公表することで「知事から求められて検討したという形にはしたくなかったのだろう」と推察した。

 玉城知事は自衛隊の役割は認める立場を引き合いに「自衛隊の普段の活動の安定性にも非常に大きく影響する。拙速に進めるべきではない」と畳みかけた。県幹部は「今回の問題は地域で賛成と言っている人がまずいない。賛否ある問題との違いがある」と解説した。

 玉城知事は県内での急速な軍備強化の動きが顕在化する中、「性急に事を進めるやり方が非常に強くなっている。多くの県民の不安は高まりこそすれ、収まりはしない」とも語り、「計画ありき」の防衛力整備にもくぎを刺した。

■足元

 訓練場整備を巡っては、空包やヘリを使った訓練を取り下げるなど防衛省としては既に「妥協」(同省関係者)していた。自衛隊内からは「使い勝手が悪い」「譲り方を間違えている」と不満の声が出ていた。それでも木原氏が再検討を指示したのは、防衛省の想定以上の反対の広がりがある。うるま市で3月に予定される地対艦ミサイル部隊の新編など他の計画への影響も懸念された。

 特に防衛省は、自民県連など県内の保守系にも計画への難色が広がったことを重く受け止めた。自民党関係者は「防衛省は整備を急ぎたいかもしれないが、各地での自衛隊増強はわれわれが市長などのポストを取っているからできる。それを忘れられては困る」とけん制。強行によって6月の県議選など各種選挙で不利になれば、他の防衛力整備にも影響が出ることを示唆した。

 一方で木原氏が提示した内容は、計画撤回などを求める地元の要望にはほど遠い。政府関係者は「県議選までは保革ともに選挙を意識した発言しかできない。『クールダウン』の期間を設けることで進めやすくなる」と期待する。計画そのものの撤回は「ない」と否定した。

 地元・旭区の評議委員の一人は「これまでの(地元の)行動の影響が出てきていると思う」としつつ、木原氏の「再検討」指示について「その場限りの対応にしか思えない。造られてしまえばなし崩し的に機能強化がされる。なんとか計画撤回まで持っていきたい」と強調した。

(知念征尚、佐野真慈、明真南斗、金盛文香)