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防衛費増で財政悪化恐れ 有識者 43兆円超提起 財源、国債や保有株売却も


防衛費増で財政悪化恐れ 有識者 43兆円超提起 財源、国債や保有株売却も 防衛費の増額と財源のイメージ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 2023年度から5年間で防衛費を総額約43兆円とする政府計画に対し、関係者から増額を求める声が上がり始めた。円安や物価高で装備品価格が上昇しているためで、議論が活発になりそうだ。だが既存計画分の財源すらめどが立たない中、上積みには資金調達が壁となる。国債発行を余儀なくされれば、財政が一段と悪化する恐れもある。
 19日の防衛省有識者会議で座長の榊原定征元経団連会長は、約43兆円という水準に関し「求められる防衛力の強化が本当にできるのか」と見直しを提案。島田和久元防衛事務次官も「自助努力で経済変動に対応するのは難しい」と同調した。
 有識者の問題意識の背景には急激な円安や物価高がある。約43兆円の総額を盛り込んだ防衛力整備計画を決定した22年12月の想定レートが1ドル=108円だったのに対し、最近は150円前後で推移している。部材や素材の価格も上がり、C2輸送機やP1哨戒機など多くの装備品価格が大きく上昇しているという。
 防衛力整備計画で掲げた43兆円のうち、従来の水準より増額となる約17兆円は歳出改革や増税などで賄うが、措置できるかどうかは不透明だ。増税は法人、所得、たばこの3税が対象で、27年度時点で1兆円強を確保する考えだが、政局の混乱もあり政府と与党は開始時期を決めていない。歳出改革も特定分野を念頭にした具体的計画が存在するわけではない。
 こうした中、防衛費を約43兆円から一段と増額しようとすれば、国債発行や政府保有株の売却が検討される可能性もある。鈴木俊一財務相は「この水準を超えることは考えていない」と上積みを否定。木原稔防衛相も「防衛力の抜本的強化が達成でき、防衛省・自衛隊として役割をしっかりと果たすことができる水準」として、見直しは考えていないとした。