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放射線防護6施設 損傷 能登地震 志賀原発30キロ圏、一部閉鎖


放射線防護6施設 損傷 能登地震 志賀原発30キロ圏、一部閉鎖 能登半島地震で損傷や異常が起きた放射線防護施設と被害
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 北陸電力志賀(しか)原発(停止中、石川県志賀町)30キロ圏にあり、事故時に高齢者らが一時避難する21の放射線防護施設のうち、能登半島地震で6施設に損傷や異常が起きたことが21日、自治体などへの取材で分かった。うち2施設は使えずに閉鎖し、病院など別の2施設は患者らを移した。断水は全21施設で起きた。緊急時に支援が要る住民を守るという役割を果たせなかった恐れがある。
 閉鎖した一つは被ばくを防ぐ機能を維持できず、残る5施設も地震後長期間、機能の確認ができなかった。内閣府によると全国の原発周辺には計約300の防護施設がある。屋内退避の在り方を定めた指針の見直しを始めた原子力規制委員会は施設の耐震化などを論点としない構えだが、地震の被害の大きさを踏まえると各地の避難計画の実効性が問われそうだ。
 原発30キロ圏の自治体は放射性物質が拡散する事故に備え、一部の病院や社会福祉施設、学校などに気密性や気圧を高める被ばく対策を施した防護区画を設けている。国の指針に基づき、乳幼児や高齢者、傷病者などすぐに逃げられない「要配慮者」が一時的に身を寄せる。志賀町は12施設あり、昨年10月時点で811人の要配慮者が暮らす。
 6施設のうち志賀町の「町立富来小学校」は建物の被害が激しく今年1月30日に閉鎖。防護区画は天井が損傷し雨漏りが発生、トイレの窓に隙間ができた。町の担当者が2月7日、気圧を上げ外気の侵入を防ぐ「陽圧化装置」を起動したが必要な気圧にならず、担当者は「気密性が保てず駄目だった」と話した。
 同町の総合武道館は、防護区画外で天井が崩落する恐れがあり1月2日に閉鎖。その後、防護機能は維持されていることが分かった。
 町立富来病院は区画内の柱が損傷し、陽圧化装置の吹き出し口が脱落。入院患者ら72人を他の医療機関に転院させた。2月上旬時点で、機能の確認ができていない。「特別養護老人ホームはまなす園」(志賀町)は防護区画内でスプリンクラーが作動、水浸しとなって入所者50人を隣接する施設に移した。
 「稗造防災センター」(同)は埋設浄化槽が損傷。石川県七尾市の「中島地区コミュニティセンター豊川分館」は自家発電機が故障し起動しなかった。