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疑惑渦中、懸念拭えず 審理の情報開示要望も


疑惑渦中、懸念拭えず 審理の情報開示要望も 衆院予算委で答弁する盛山文科相=15日
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への解散命令請求の実質審理が22日、東京地裁で始まった。宗教行政所管庁トップとして請求を決定した盛山正仁文部科学相は、教団側から選挙支援を受けたとする疑惑が取り沙汰される。本人は真っ向否定するが、手続きに影響が及ぶのではないかとの懸念は拭えていない。非公開の審理はベールに包まれ、一定の情報開示を要望する声も上がる。
 「審理に万全を期す。裁判所の手続きは私への評価で左右されない」。盛山氏は22日の閣議後記者会見で、教団側と文科省側双方から意見を聞く「審問」が初めて開かれるのを前にそう語った。
 2021年の衆院選前、地元神戸市で教団関連団体の会合に参加したほか、教団側の選挙支援を受けていたと今年2月上旬に報じられた盛山氏。その後も“接点”を指摘する報道が続いた。
 国会答弁などでは、会合参加と推薦状の受け取りはおおむね認めたものの、「政策協定」とされる推薦確認書への署名は「記憶がない」と曖昧な答弁に終始した。選挙支援は依頼していないとの説明を繰り返している。
 審問を控えたタイミングでの疑惑浮上に、野党は「利益相反だ」と攻勢を強めたが、盛山氏は「教団に忖度(そんたく)をしたことはない」として辞任を否定。一連の報道を、教団側の「揺さぶり」だとする見解まで示してみせた。
 立憲民主党が提出した盛山氏の不信任決議案は、20日の衆院本会議で自民、公明両党に加えて日本維新の会なども反対し否決された。文科省幹部の一人は「今回の疑惑で、裁判の方針が変わることはあり得ない」と力を込め、省内には一区切りとの見方が広がる。
 一方で別の幹部は「事情を知らない一般の人は『悪影響が出るのでは』と思うだろう」と、裁判の正当性に疑念を持たれないか不安を吐露する。
 報道各社の世論調査では「辞任すべきだ」との声が過半数を占め、教団信者の親を持つ2世の30代男性も「(盛山氏に)反省や決別の気持ちは感じなかった。教団と向き合う資格がない」と辞任を求める。
 2世の山本サエコさん=仮名=は「しっかり行動で示すことで、関係を断っていると証明してほしい」と注文。地裁の審理について「宗教はどうあるべきかという本質に立ち返り、血の通った司法判断を」と訴えた。
 教団側は「解散命令の要件に当たらない」としており、文科省側と全面的に争う姿勢だが、双方が今後どのような主張を展開するか、当事者以外が確認するのは困難だ。
 文科省は、一連の司法手続きが「非訟事件」として、全て非公開で行われることを理由に、解散命令請求の申立書の概要を昨年10月に公表して以降、経過を一切明らかにしていない。22日の審問開催自体認めていない。
 文科省側が提出した証拠資料は膨大な数に上り、審理は長期化が予想される。2世の30代男性は「文科省は審理の状況を説明する義務がある」と情報開示を求める。
 ジャーナリストの江川紹子さんは、個人情報の保護などに理解を示した上で「信教の自由に関わる重要な判断がされる以上、文科省は国民がある程度の状況を確認できるよう情報を出すべきだ」と指摘。外部から検証できるようにすることで「審理の信頼性が高まる」と話した。