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過去 幕引き利用も 裏金政倫審開催へ 偽証罪なし、解明に疑問符


過去 幕引き利用も 裏金政倫審開催へ 偽証罪なし、解明に疑問符 過去の政治倫理審査会の開催例
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件で開催される国会の政治倫理審査会は、ロッキード事件を機に1985年に設置され、衆院で過去8人が出席した。証人喚問と違って偽証罪に問われず、疑惑を晴らしたり真相を解明したりできるのか疑問符が付く。過去を振り返ると、潔白を主張し「幕引き」を図る舞台に利用された側面もうかがえる。(肩書は当時)

 みそぎ

 「弁明の機会が与えられたのはありがたい」
 96年9月25日、自民の加藤紘一幹事長は初開催となった政倫審出席を終え、安堵(あんど)の表情を見せた。鉄骨加工会社「共和」からのヤミ献金疑惑に対し、自ら審査を申し立て、無実を訴えた。
 衆院解散を2日後に控え、「みそぎ」としたかった自民。野党は「真相は解明されず全く意味がなかった」「疑惑解明へ証人喚問すべきだ」と反発し、連立与党だった社民党も「加藤氏の弁明は苦しい詭弁(きべん)ではないか」と厳しい見方を示した。
 議員にも報道にも完全非公開とされたのは、この時の1回だけだ。
 98年6月5日の山崎拓自民政調会長、2001年2月26日の額賀福志郎前経済財政担当相(現衆院議長)の際は、議員の傍聴を認めた一方で報道非公開のままの弁明となり、2人とも疑惑を否定した。野党には追及の手だてが乏しく、真相解明の限界を露呈した。

 ノーコメント

 初めて報道陣に公開で実施されたのは02年7月24日。公設秘書給与流用疑惑を指摘された田中真紀子前外相が開催を申し立てた。約2時間の審査で、田中氏は「細かいことは分かりません」などと事実上のノーコメントを連発し、同席した弁護士や公認会計士が弁明に立った。
 与野党ともに「疑惑が残った」と不満をためたが、6日後に奥野誠亮政倫審会長が「疑惑解明には至らなかった」との報告書を衆院議長に提出し、審査を終結させた。
 奥野氏は「政倫審は継続的に疑惑を解明する場ではない」と語っている。田中氏は世論の批判が高まり、翌月議員辞職した。
 04年11月30日には日本歯科医師連盟(日歯連)からの献金隠し事件で、橋本龍太郎元首相が出席した。1億円受領の事実は認めたものの、詳細は「知らない」「指示していない」と繰り返した。

 与野党攻防

 09年7月17日の政倫審は民主党の鳩山由紀夫代表の政治資金虚偽記載問題を巡り、麻生政権側が申し立てた。鳩山氏は出席せず約20分で休会に。政権末期で、自民側も疑惑議員を抱えていたため、民主側が強気に出た。
 一方、民主党政権下の10年には、資金管理団体「陸山会」の収支報告書虚偽記入事件で強制起訴が決まった小沢一郎元代表を巡って揺れた。小沢氏は一時、出席意向を示したが、土壇場で態度を転換。結局開催には至らなかった。