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デブリ取り出し2工法で 福島第1、報告書判明


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 東京電力福島第1原発3号機の溶融核燃料(デブリ)取り出し工法をまとめた原子力損害賠償・廃炉等支援機構の報告書の全容が7日、判明した。気中に露出したまま取り出す工法と、充塡(じゅうてん)材で固めて掘削する工法の組み合わせを有力案として提示。作業エリアでの放射線量低減が期待できるとした。東電に「できるだけ速やかに具体的な設計検討を開始」するよう求めた。
 東電は3号機を念頭に、2030年代に大規模なデブリ取り出しを始める計画。機構はこれまで、「気中」と「充塡固化」のほか、原子炉建屋全体を水で満たす「冠水」の三つの工法を提示し、長所と短所の整理を進めてきた。
 第1原発1~3号機に残るデブリは推計で880トン。冷却のため注水を続けており、地下水や雨水と混ざって汚染水となり、多核種除去設備(ALPS)で浄化した後の処理水が増える原因となっている。
 気中工法は、現状に近い状態のままデブリに水をかけながら取り出すため、作業開始が比較的早くなるが、放射線量が極めて高く、遠隔操作技術の開発が課題となる。充塡固化工法は充塡材でデブリなどを固めるため、放射線量を低減できるが、充塡材そのものが放射性廃棄物となる。冠水工法は水によって放射線を遮蔽(しゃへい)できるが、建屋を囲う構造物の建設に長期間を要する。
 報告書では、デブリ取り出しが「中長期にわたる廃炉の成否を分ける」と強調し、工法選定は全体としての迅速性を重視するべきだとした。充塡材の選定や回収方法について見通しが得られれば、気中工法との組み合わせが有力になると指摘。東電に「(充塡固化と)気中工法と合わせた取り出しシナリオを想定すべきだ」とし、建屋の内部調査や工法の研究開発に取り組む必要があるとしている。
 報告書はまた、取り出しには不確定要素が多く、新たな情報が得られた場合は、ためらうことなく工法の見直しに取り組むべきだとした。