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<解説>実態は「消極的容認」


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 今回の世論調査で、東京電力福島第1原発処理水の海洋放出賛成が70%を占めた。しかし賛成した人のうち58%が政府と東電の説明を不十分と評価したほか、36%が水産物の安全性に懸念を示しており、実態は「消極的容認」に過ぎない。政府と東電は慢心せずに国民の不安や疑問に向き合い、今後約30年続く放出の安全を確保する義務がある。
 政府と東電は2015年に「関係者の理解なしに(処理水の)いかなる処分も行わない」と福島県漁連と約束していたにもかかわらず放出を強行した。安全性の説明も、放出開始直前に公表された国際原子力機関(IAEA)の報告書という“錦の御旗”にすがった。放出賛成の理由にIAEAを挙げた人が最多だったのはその証拠だろう。
 賛成理由として「その他」を選択した人にも「他に方法がない」「不安がないわけではないが仕方ない」といった意見が目立った。政府と東電が信任を得たとは到底言えない。
 第1原発の廃炉作業では今後、本丸の溶融核燃料(デブリ)取り出しが控える。デブリの処分を巡っては議論すら始まっていない。処理水放出で露呈した課題を今後に生かせないようでは、廃炉完了はおぼつかない。