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震災語り部、継承不安9割 高齢化、資金難で苦境


震災語り部、継承不安9割 高齢化、資金難で苦境 震災伝承活動継続の不安に関する語り部団体の回答
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 東日本大震災の教訓を伝え、次の災害から命を守るための語り部活動が苦境に立たされている。民間団体の調査で、東北被災地の語り部団体のうち活動継続に不安を感じるとの回答は96%。担い手の高齢化や資金難が理由だ。「このままでは自然消滅する」と悲痛な訴えも。国や自治体からの支援強化を求める声が広がる中、震災を知らない若い世代が役割を担おうという動きもある。 (1面に関連)

 宮城県石巻市の公益社団法人「3・11メモリアルネットワーク」は昨年12月、岩手、宮城、福島3県で語り部などの震災学習プログラムを実施する団体を対象とした調査報告書を公表。24団体のうち4団体が、活動継続に「大いに不安がある」、12団体が「多少不安がある」、7団体が「不安がある」と回答した。「あまり不安がない」は1団体のみで、不安がないとの回答はゼロだった。
 人材面の課題を複数回答で聞くと、15団体が「高齢化で後継者がいないか少ない」と回答。現状では、現役引退後の比較的高齢世代が団体の中心となって活動するケースが多く、先細りへの懸念が浮き彫りとなった。
 財政面では、20団体が運営の財源を「参加者からの対価収入」(語り部料金など)に頼っていると回答した。今後期待する財源としては「市町村」「県」「国」が上位に並び、行政からの財政支援を切望する声が相次いだ。現在、語り部団体への財政支援は一部自治体にとどまり、国の支援はない。
 岩手県大船渡市で活動する大船渡津波伝承会は、全員がボランティア。2013年の活動開始後は年間6千人ほどだった来訪者が近年は千人程度となり、料金収入も減った。
 斉藤賢治会長(76)は「(語り部の話を)聞きに来る人が減れば、自然消滅になる」と危機感を隠さない。「行政はもっと積極的になってほしい」
 震災の風化が懸念される中、若い世代の語り部育成の取り組みも一部で始まっている。3・11メモリアルネットワークの中川政治専務理事は「能登半島地震の被災地でも東北の教訓は生かされている。次の災害への備えを促すのも語り部の重要な役割。財政的支援は必須だ」と訴えている。