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【深掘り】「沖縄全体を基地だと思っているのか」 オスプレイ飛行再開 嘉手納ではパラシュート降下訓練を強行


【深掘り】「沖縄全体を基地だと思っているのか」 オスプレイ飛行再開 嘉手納ではパラシュート降下訓練を強行 14日に飛行再開したオスプレイ(左)と、米軍嘉手納基地で実施されたパラシュート降下訓練(右)のコラージュ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 沖縄の置かれている「不条理」が顕在化したような1日だった。米海兵隊は14日、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの飛行を再開した。県や宜野湾市が政府に求めた詳細な事故原因とそれに基づく再発防止策の説明もないまま強行した形だ。同日、嘉手納基地では米空軍によるパラシュート降下訓練が、こちらも県や地元自治体の中止要請を無視する形で、異例の4カ月連続で実施された。昨年4月に宮古島市で発生した陸上自衛隊ヘリ墜落事故の調査結果公表もあり、県民は軍用機の事故に強い懸念を抱え、地元の声に耳を傾けない米軍や日本政府に対する憤りが広がっている。

 米軍普天間飛行場所属のMV22オスプレイは飛行再開初日から県内各地を縦横無尽に飛び交った。那覇市街地上空の飛行も確認され、県政与党幹部の一人は「(防衛局が説明した)『段階的』とは何だったのか。沖縄全体を基地とでも思っているのか」と批判。玉城デニー知事は、米軍と緊密な連携を強調する政府の説明についても「筋が通っていない」と指摘し、疑問のまなざしは日本政府にも向かう。

デニー知事、憤りあらわに

 「オスプレイの運用を段階的かつ慎重に進めていくことを確認した」

 飛行再開に先立ち木原稔防衛相は13日夜、防衛省で臨時記者会見を開いた。オースティン米国防長官との電話会談の内容を報告した。

 だが、14日に飛行を再開したMV22オスプレイは那覇市や浦添市の上空で目撃された。「段階的かつ慎重」な運用はみじんもうかがえなかった。

 防衛省関係者は「厳密にこれ以上は飛行してはいけないなどと範囲を制限している訳ではない」と米軍の運用に関与できない実態を明かしつつ「米軍も自分たちの命がかかっているので無茶な飛び方はしない」と擁護した。

 こうした地元の懸念を無視しての飛行再開に、県内での反発は強まるばかりだ。

 玉城デニー知事は「防衛省の対応は本当に不条理極まりない」と厳しく批判した。辺野古新基地建設や、うるま市石川の陸上自衛隊訓練場整備計画など、地元の意向を軽視した防衛関連施策が相次ぐことに「沖縄ではそれが許されると思っているとしたら大間違いだ」と怒りをあらわにした。

 県議会は屋久島での墜落事故当時、原因究明と公表などを求める抗議決議と意見書を全会一致で可決していた。飛行再開に与党県議は「県議会の意思を全く無視しており、看過できない行動だ」と強く反発。さらなる抗議決議・意見書に向けて「当然、提案していく」と意欲を示した。一部野党や中立会派も「事故原因の説明もなく堂々と住宅地を飛ぶなんて、あってはならない」と不満を募らせた。

「われわれには限度がある」

 県内では同日、同じく地元が反対する嘉手納基地でのパラシュート降下訓練を米空軍が強行した。「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協)はこれまでも「事故等により、周辺住民に重大な影響を及ぼす恐れがあり、訓練の常態化につながる」などとして、繰り返し国に抗議要請してきた。

 嘉手納基地は、空軍仕様のCV22オスプレイがたびたび飛来する。昨年11月に墜落したオスプレイも嘉手納に向かう最中だった。

 4カ月連続のパラシュート訓練の実施に、オスプレイの飛行再開と、地元の意向より訓練の習熟度の向上を重視する米軍と、それを追認する日本政府に対しての不満は頂点に達しようとしている。

 三連協会長の桑江朝千夫沖縄市長は「オスプレイに関して防衛局から直接の説明や、説明のための時間設定の問い合わせもない。段階的に再開するというだけでは不安は払拭されない」と政府の対応に難色を示した。「このように飛んでしまうとどうしたものか」と押し黙り「われわれには限度がある」と強い憤りをにじませた。

(知念征尚、佐野真慈、福田修平、明真南斗)