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次期戦闘機、輸出解禁へ 自公合意、協定国限定 国会は賛否示せず 後付けで拡大も


次期戦闘機、輸出解禁へ 自公合意、協定国限定 国会は賛否示せず 後付けで拡大も 日本、英国、イタリアが共同で開発する次期戦闘機のイメージ(防衛省提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 自民、公明両党は15日、英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機の第三国輸出の解禁に合意した。輸出先は日本と防衛装備品輸出に関する協定を結んだ国に限り、個別案件ごとに閣議決定する。輸出に慎重だった公明は、こうした岸田文雄首相の手続き厳格化方針を評価した。政府は合意を受けて輸出方針を閣議決定し、26日に防衛装備移転三原則の運用指針を改定する方針だ。
 昨年12月に外国企業の許可を得て日本で製造するライセンス生産品などの輸出を解禁したのに続く政策転換となる。将来、輸出する際を含めて国会が賛否を示す機会はなく、国際紛争の助長を避ける歯止め策の実効性も不透明だ。
 自民の渡海紀三朗、公明の高木陽介両政調会長が会談し、輸出容認で一致した。会談後、渡海氏は「両党の考え方を真摯(しんし)にぶつけ合い、国民の理解が深まった」と記者団に述べた。高木氏は「説明責任はこれからも続く」と指摘した。
 首相は13日の参院予算委員会で、輸出を解禁する運用指針の改定に向け「閣議決定として政府方針を決定したい」と表明。実際に輸出する場合も与党協議を経て閣議にかけるとし「二重の閣議決定で、より厳格なプロセスを経る」と言明した。
 運用指針の改定では、国際共同開発する防衛装備品のうち、今回は次期戦闘機に第三国輸出を限定。歯止め策として輸出先は「防衛装備品・技術移転協定」の締結国に限り、現に戦闘が行われている国には輸出しない。
 日本が現在、協定を結んでいるのは米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スウェーデン、オーストラリア、インド、シンガポール、フィリピン、インドネシア、マレーシア、ベトナム、タイ、アラブ首長国連邦(UAE)の15カ国。

 自民、公明両党が次期戦闘機の第三国輸出解禁で合意した。岸田文雄首相は厳格な歯止めを強調するが、公明の同意を得るための演出という色が濃い。輸出可能な国は現在の15カ国から将来増える可能性があり、国会でなく閣議での決定が歯止めになるとの説明にも疑問は拭えない。戦闘機は殺傷能力が極めて高いだけに、より幅広い議論が必要だったのではないか。
 政府は次期戦闘機の輸出先を日本と「防衛装備品・技術移転協定」を締結した国に限り、個別案件ごとに閣議決定する方針を示した。だが新たに協定を結べば対象国は増やせる。
 輸出先で国際法違反の攻撃に使用される事態は想定されないと主張するものの、木原稔防衛相は「万が一、侵略などに使われる場合、是正要求や部品移転の差し止めを含め厳正に対処する」と国会で答弁した。絶対に使われないとは断言できないのが実情だ。
 政府は今回、国際共同開発する防衛装備品のうち、次期戦闘機に限って解禁する。しかし2022年に共同開発に合意した後、相手国に求められたからとルール変更を進めた今回の展開を踏まえれば、今後も「後付け」で拡大に動きかねない。
 技術進展や安全保障環境の変化に伴い、国民の中には共同開発や輸出の必要性に一定の理解がある一方、慎重な声も根強い。だからこそ、国会で堂々と議論するのが筋のはずだ。