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被災職員「強い疲労」2割 能登地震 専門家「休める環境を」


被災職員「強い疲労」2割 能登地震 専門家「休める環境を」 職員の健康管理のイメージ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 能登半島地震で大きな被害を受けた石川県珠洲市など6市町の職員延べ3957人の2割超が「疲労感が強く要注意」とされたことが21日、産業医科大と広島大のチームの分析で分かった。災害派遣医療チーム(DMAT)などとして働く医療従事者と比べ高いことから、専門家は「疲労感は相当強く、業務の生産性も下がってしまう。休める環境づくりが必要だ」と訴える。

 6市町は、珠洲市の他、輪島市や穴水町、能登町、志賀町など。健康状態把握の取り組みに参加した職員に、スマートフォンから、日々の体調や症状などに加え、疲労感を1の「疲れを全く感じない最良の感覚」から10の「何もできないほど疲れきった最悪の感覚」まで10段階で入力してもらった。1月14日~2月29日に実施し、1回の入力を1人とカウント、延べ3957人分のデータが集まった。
 チームの解析では、疲労感が7以上で要注意となったのは22・8%に上った。ほぼ同時期にDMATや災害派遣精神医療チーム(DPAT)で派遣された支援者では、要注意は3・1%だった。
 6市町の職員の場合、地震発生から日数が経過するにつれ、要注意の割合は緩やかに低下傾向にあった。ただ、疲労度が高いと自覚する人ほど「眠れていない」「イライラしている」といった状況だと答える人が多く、業務のパフォーマンスが下がりがちだった。
 自治体職員は自らも被災しながら、避難所の運営など急増した業務に対応し、疲弊が懸念される。産業医科大などのチームは、被災地で健康状態を簡易に把握し迅速なフォローにつなげるためのシステム「J―SPEED」の行政職員版を初めて活用した。
 チームが結果を確認して医師が必要に応じて電話で即日聞き取り、休養や受診を促す。自治体の労務担当者と内容を共有し、早急に適切な対策につなげようという仕組みで、現在も実施している。
 産業医科大の立石清一郎教授は「被災地の早い復旧には、自治体職員が健全な状態で働き続けることが重要だ。外部の応援職員ができる仕事は任せ、休める環境をつくってほしい」と話している。