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皇太子さまに元号案伝達 19年 安倍首相「令和」に力点


皇太子さまに元号案伝達 19年 安倍首相「令和」に力点 元号「令和」選定を巡る主な動き
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 元号「令和」決定に先立ち、当時の安倍晋三首相が2019年3月に皇太子さま(現天皇陛下)と面会した際、最終候補6案を提示した上、令和に力点を置いて説明していたことが分かった。官邸内の協議で「元号の検討状況の報告ならば、天皇の政治的関与を禁じた憲法に抵触しない」との認識を共有し、事前伝達を容認したことも判明した。複数の関係者が23日明らかにした。令和は19年4月1日の決定から間もなく5年を迎える。
 元号の事前伝達は安倍氏の支持基盤である保守派が強く要求。当時から実際に伝えたのではないかとの臆測はあったが、安倍氏は令和決定後の記者会見で面会内容の説明を控えたため、曖昧になっていた。
 安倍氏は3月29日、皇太子さまと東宮御所で面会した。関係者によると、元号6案の出典や意味などが併記されたA3判紙を見せた。政府が4月1日の有識者懇談会などで示したものと同じ文書で、令和は一番左にあった。安倍氏は順次紹介する中で「精魂を込めて検討してきたが、一番左の案が非常に素晴らしいのではないかとの意見が多かった」と伝え、令和に重きを置いていた。
 元号の出典は漢籍(中国古典)が慣例だったものの、安倍氏は国書(日本古典)を強く希望した。官邸幹部と協議の末、万葉集を典拠とする令和が最適との見解で一致し、面会前日の28日に最終候補6案をまとめた。国書から3案、漢籍から3案とバランスを取った。
 当時、保守派は「天皇と元号は一体不可分」と主張し、将来の贈り名(追号)にもなる元号の事前伝達にこだわっていた。一方で新天皇となる皇太子さまが選定過程に関わったとの疑義が生じれば「天皇は国政に関する権能を有しない」との憲法規定に反する可能性が取り沙汰された。
 官邸内の協議では憲法解釈も議題となり、意見を聞かない形での説明にとどめれば、憲法違反との指摘は避けられるとの判断に至った。