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4万円減税 現場混乱 6月開始 自治体、企業 負担重く


4万円減税 現場混乱 6月開始 自治体、企業 負担重く 東京国税局が企業の給与担当者向けに開催した説明会=3月、東京都品川区
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 6月から始まる所得税と住民税の4万円の定額減税を巡り、支給の実務を担う自治体や企業の間で混乱と懸念が広がっている。対象者の絞り込みや支給業務が複雑で、事務負担が重いためだ。岸田文雄首相の主導で決まった物価高対策の目玉だが、手間がかかる割には対象者に所得増の実感が伝わりにくく、経済効果を疑問視する声もある。
 「信じられないほどの短期間で準備をしなければならず、大混乱だ」。東京都内のある区役所の担当者は、開始に間に合うかどうか強い不安を感じている。
 定額減税は、1人当たり所得税3万円と住民税1万円を本来の税額から差し引く形で実施。サラリーマンの場合、勤務先から受け取る給与明細で源泉徴収されている税金が、減税分だけ少なくなることになる。対象は年収2千万円以下の納税者で、納税者と配偶者、子ども1人の世帯なら計12万円の減税となる。
 この区役所でも対象者や支給額を確定させる作業を急ぐが、扶養家族が海外に住んでいれば対象外だったり、サラリーマンと個人事業主、年金受給者などで減税方法が違ったり作業は膨大だ。
 企業の事務作業の負担も重い。所得税は6月、住民税は7月の給与明細で減税しきれない場合、翌月以降の給与で減税額に達するまで調整することになる。納税額が少なく満額を減税しきれない場合は残りを給付で対応することになるなど、きわめて煩雑となっている。
 東京国税局が3月下旬に東京都品川区で開いた説明会では、参加した企業の給与担当者から「転職者が出た場合はどうするのか」「結婚や出産で家族が増えたらどう扱うか」など質問が相次いだ。国税庁は「いったん6月から減税を実施し、変更が出た場合は年末調整で過不足を修正できる」と説明するが、実際にそうした面倒な作業を担うのは企業の担当者だ。
 ある経済団体の幹部は「わざわざ減税にこだわらなくても、現金給付の方が収入増が分かりやすい」と指摘。自民党議員からさえも「所得増の実感が湧かず、貯蓄に回る可能性もある」と効果を疑問視する声が上がる。
 定額減税 所得の額などに関係なく、同じ金額を納税額から差し引いて減税する手法。納税額から一定の割合を差し引く「定率減税」と区別される。今回の定額減税は1人当たり所得税3万円、住民税1万円で、所得税は6月から、住民税は7月から減税される。所得税と住民税を納めていない低所得世帯については、1世帯7万円の給付措置で対応する。