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機密扱う民間人を調査 経済安保法案、衆院を通過 知る権利制限と懸念も


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 機密情報の保全対象を経済安全保障分野にも広げる新法案「重要経済安保情報保護・活用法案」は9日の衆院本会議で、自民、公明両党と立憲民主党などの賛成多数により可決され、衆院を通過した。国が民間人を身辺調査し、資格を与えた人のみが情報を扱う「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」制度の導入が柱。恣意(しい)的な情報指定により、国民の知る権利が制限されかねないとの懸念も根強い。野党の修正を受け入れ、国会による監視を盛り込んだ。
 漏えいすると国の安保に支障を与える可能性があるものを「重要経済安保情報」に指定する。情報を漏らした場合は、5年以下の拘禁刑などの罰則。従業員の所属企業に罰金を科すケースも想定する。
 より機密性が高く、漏えいで安保に著しい支障の恐れがある情報は「特定秘密保護法」の運用拡大で対応。新法案と合わせ二段構えで秘密保護法制を強化する。参院での審議を経て今国会で成立する見通しだ。
 既に適性評価の制度を運用する欧米各国と足並みをそろえ、当局間の情報共有や民間の競争力強化を図る。経団連は国際的な共同開発などに参加できないとして、制度の創設を求めていた。
 ただ新法案では対象となる具体的な情報は明示されていない。有識者はプライバシーが侵害されかねないとも指摘する。
 法案の修正で、対象情報の指定や解除、適性評価の実施状況などを国会が監視する制度となる。日本維新の会、国民民主党も賛成。れいわ新選組や共産党は反対した。
 自民側は「重要経済安保情報を保護しつつ、民間で活用を図っていくため必要不可欠だ」と主張。立民は、情報の指定件数などに「なお不明点が残る」と指摘した。共産は機微な個人情報の調査には断固反対とした。
 政府は新法案の情報指定や解除など具体的な運用基準に関し、法制化後に有識者会議で検討を進めるとしている。
 この日の本会議では、サイバー攻撃などを防ぐため「基幹インフラ」に港湾運送事業を追加する経済安全保障推進法の改正案も可決された。