有料

月給上乗せ10%以上 中教審案 50年ぶり教員処遇改善


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 教員の確保策を話し合う中教審の特別部会が、公立学校教員に残業代の代わりに支給している月額給与の4%相当の「教職調整額」について、10%以上に引き上げる案で調整していることが12日、関係者への取材で分かった。近く開かれる会合で提示し、働き方改革などと一体的に、5月中に一定の方向性を示す方針。
 教職調整額は1972年施行の教員給与特別措置法(給特法)に基づく制度で、引き上げられれば約50年ぶり。義務教育段階の公立学校教員の給与は、国が3分の1、自治体が3分の2を負担しており、10%に引き上げた場合、公費負担は約2100億円に上り財源確保が課題となる。
 現行の4%は66年度の調査で平均残業時間が月8時間程度だったことが根拠。一方で文部科学省によると、2022年度に小学校で64・5%、中学校で77・1%の教諭が、残業時間が上限の月45時間を超えており、教職調整額は現在の勤務実態を反映していない。
 学校では長時間勤務が当たり前となり、教職人気低下の一因に挙がる。一部の教育関係者らは、給特法の枠内では管理職が勤務時間を減らそうとする動機につながりにくく、長時間労働の温床だと指摘。抜本的改正となる残業代支払い制度への転換を求めていた。だが特別部会では、教員の仕事は職務と自主的な活動との線引きが難しいなどの理由から、制度自体は維持して教職調整額を増額する意見が強まった。
 教員確保策を巡っては自民党の特命委員会が23年5月、教職調整額を10%以上に増額することを柱とした提言をまとめ、働き方改革を進めることも盛り込んでいた。
 永岡桂子前文科相は同月、総合的な方策の検討を中教審に諮問。具体的な検討事項として(1)勤務制度を含めた働き方改革(2)待遇改善(3)学校の指導・運営体制の充実―を挙げた。
 教員給与特別措置法 公立学校の教員に時間外勤務手当(残業代)を支払わないと規定し、その代わりに月額給与の4%相当の「教職調整額」を支給すると定めた法律。通称は給特法で、1972年に施行された。当時の残業時間が算定根拠の一つで、教員の繁忙化が進んだ現状と乖離(かいり)しているとの指摘や、「サービス残業の温床」といった批判もある。