米海軍は11と12の両日、海上自衛隊、韓国海軍と共に沖縄北方の東シナ海上で合同訓練を実施し、11日に原子力空母セオドア・ルーズベルトで行われた訓練の一部を報道公開した。日米が訓練目的として特定の国への言及を避けた一方、韓国海軍はウェブページで、ミサイル開発を強める北朝鮮を名指しし「これに対抗する共同対処能力の向上に重点を置いた」と説明。3カ国の訓練の主眼からは温度差も伝わってきた。
全長約330メートルの飛行甲板上では、航空機を2秒で約240キロに加速させるカタパルト(射出機)を使い、FA18戦闘攻撃機が相次いで発艦した。ごう音がとどろき、発艦後に吹き付ける熱風と白煙が訓練の激しさを物語った。
日本や韓国などの取材陣は米軍嘉手納基地から固定翼機のC2Aグレイハウンドに搭乗し、約1時間かけて、東シナ海上の空母まで移動した。着艦時は、短い距離で航空機を止める必要があるため「アレスティング・ワイヤ」と呼ばれるケーブルに機体を引っかけて止める。「制御された墜落」とも称される強い衝撃が機内に走った。
訓練には空母のほか、米軍のイージス艦3隻と韓国海軍のイージス艦、海自の護衛艦ありあけが参加。海上での阻止行動や航空戦、要員交換に関する訓練を実施した。米軍は昨年8月の日米韓首脳会談で合意した、3国間の共同訓練の定例化の一環と位置付けた。
一方、訓練目的は温度差が生じた。海自は発表文で訓練目的を「戦術技量の向上並びに米海軍及び韓国海軍との連携の強化」と記述した。セオドア・ルーズベルト艦上でインタビューに応じた米海軍第9空母打撃群司令官のクリストファー・アレクサンダー少将は共同訓練により「あらゆる不測の事態、そしてこの地域における危機への備えとなる」と強調した。いずれも特定の国には言及しなかった。
だが、韓国海軍は「対潜水艦戦訓練を集中的に実施し、潜水艦や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)など北朝鮮の水中脅威への対応能力を点検した」と説明した。中国には言及しなかった。
今回、空母セオドア・ルーズベルトが参加したこと自体も特徴的だ。もともと米本国に拠点を置くが、現在は横須賀を拠点とする第7艦隊の指揮下に入っているという。
第7艦隊所属の空母ロナルド・レーガンが改修を控え横須賀に寄港を続ける中、中国など念頭に米軍がアジア地域に関わる意思を示すと共に、通常は極東地域に展開していない艦艇との連携を向上させる狙いがあると見られる。
(知念征尚)