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【識者】住民配慮し、十分な説明を 自衛隊増強進む沖縄 野添文彬氏(沖縄国際大准教授)


【識者】住民配慮し、十分な説明を 自衛隊増強進む沖縄 野添文彬氏(沖縄国際大准教授)
この記事を書いた人 Avatar photo 共同通信

 政府は沖縄県で、自衛隊をなし崩し的に増強するのではなく、住民への十分な説明を尽くすことが必要だ。安全保障上、沖縄が地政学的に重要な位置にあることは一定程度認めるとしても、沖縄戦で住民が巻き込まれた歴史的経験や、在日米軍専用施設の約7割が集中する基地負担の重さを踏まえ、地元に最大限配慮すべきだ。

 防衛省は2016年、情報収集を担う沿岸監視隊を置くために陸上自衛隊与那国駐屯地を開設した。その後、電子戦部隊が発足し、さらに地対空ミサイル部隊も配備することになった。地元にとって、駐屯地を受け入れた時と話が違うとなる。

 石垣島には、尖閣諸島を守るためとして射程200キロほどの12式地対艦誘導弾が配備されたが、現在は中国本土を狙える長距離ミサイルの配備が取り沙汰されている。実現すれば攻撃目標とされるリスクは高まる。また近年の日米共同演習で、自衛隊施設を米軍が使用するケースも当たり前になってきている。

 いったん部隊を置いたら、後は国に任せろという態度では住民としては受け入れがたい。「安全保障は国の専管事項」とする自治体首長は多いが、住民の安全のために、責任を持って政府に説明を求めることも必要だ。

 沖縄返還で本島に自衛隊が配備された際、沖縄戦で住民への加害行為を行った旧日本軍に重ね合わせ、反対する県民が大勢いた。自衛隊は不発弾処理や急患搬送を担い、少しずつ支持を得てきたが、県民の不信感が強まれば、安定的な活動の基盤を揺るがしかねない。(談、日本外交史)