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社会の意識 変える契機に ありのまま受け止めて ひきこもり支援指針


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 「ひきこもり状態でも尊厳ある存在」「本人の意思を尊重」。自治体の支援に役立てるため、厚生労働省が策定する指針の骨子には、極めて当たり前の内容が書かれている。それはひきこもりに対する社会の視線が、いかに当事者を苦しめているかということの裏返しでもある。 (1面に関連)
 ひきこもりという言葉は1980年代の終わりごろから使われるようになった。当初は不登校の延長と捉えられ、就職氷河期には仕事に就かない若年無業者などと同一視された。国の支援は就労が中心となり、さまざまな生きづらさを抱えた人たちが取り残された。
 「ひきこもり=怠惰」という負のイメージが付きまとい、親が子の存在を周囲に隠したまま5年、10年と経過するケースも。親の焦りにつけ込み、高額の料金を得て、子どもを自宅から強制的に施設に連れ出す民間業者(引き出し屋)も社会問題となっている。
 当事者は頭ごなしに否定されず、ありのままを受け止めてもらえた時に、初めて「次の一歩」を踏み出せる。指針が単なる支援のノウハウにとどまらず、社会全体の意識を変えるきっかけになるよう期待する。