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立民、高揚感なき全勝 野党


この記事を書いた人 Avatar photo 共同通信社

 衆院3補欠選挙を次期衆院選の試金石と見立てた立憲民主党は、全勝したものの高揚感に乏しい。自民党派閥裏金事件の「敵失」に乗じただけで、政党支持につながっていないと分析しているからだ。後半国会で焦点となる政治資金規正法改正論議では野党をリードする構えだが、選挙協力に結び付くかどうかは見通せない。野党第1党をうかがう日本維新の会は、政権批判の受け皿となれず焦りを隠せない。

次期首相候補

 「次期首相候補だから控えめにいきましょう」。3補選で立民全勝が確実となった28日午後8時ごろ、泉健太代表は記者団への見解表明に先立ち、側近からこう耳打ちされた。その真意は「今後は政権を任せられるかどうかが問われる。はしゃぎすぎるな」とのメッセージだった。

 党内基盤が弱い泉氏にとって2021年11月の代表就任以降、初の補選勝利。負け越せば「泉降ろし」が起きかねない状況だっただけに、安堵(あんど)したのは間違いない。

 だが党内では「立民が評価されたわけではない」(幹部)というのが共通認識だ。実際、4月の共同通信の世論調査でも、立民の政党支持率は10.9%で、25.1%の自民とは開きがある。

 泉氏は衆院選での政権交代の可能性を問われ「3勝が総選挙での勝利を約束するものではない。自民との違いをこれからも訴える」と慎重な発言に終始した。

すみ分け難航

 維新と競合した2選挙区で勝利した立民は、大型連休明けから本格化する政治改革論戦で野党内の主導権を握りたい考えだ。5月7日にも野党国対委員長会談を開き、抜本改革に向け連携する方針を確認する見通しだ。安住淳国対委員長は維新を念頭に「多少私の話を聞いてくれるのではないか」と期待感を示す。

 立民としては、国会連携を次期衆院選での協力に結び付けたいとの思いが強い。しかし、3補選で立民候補を支援した共産党ですら「本選挙ではそうはいかない」(小池晃書記局長)とくぎを刺す。維新や国民民主党も憲法や安全保障といった基本政策のスタンスの違いから、立民との連携には否定的だ。

 岡田克也幹事長は4月30日の記者会見で、6月解散の可能性は捨てきれないと指摘。党幹部は「すみ分けの努力をする」と語る。維新創設者の橋下徹元大阪市長も野党候補一本化に向け予備選の実施を主張する。だが維新執行部は独自路線へのこだわりをみせており交渉は難航が予想される。

万年第2野党

 対する維新。補選を全国政党化への弾みにしたかったが、東京15区では3位に沈み、立民と一騎打ちとなった長崎3区でも大敗した。立民と共産の連携を「立憲共産党」と批判して保守層の取り込みを図るも成果が伴わなかった。「わが党の今の実力」(馬場伸幸代表)を見せつけられる形となり、党内には「万年野党第2党」(ベテラン議員)になる危機感が漂う。

 現状打破すべく将来的には自民との本格的な連携を視野に入れるべきだとの声もあるが、党幹部は警鐘を鳴らす。「関係が良好だった菅義偉首相時代ならいざ知らず、そんなことをすれば党は分裂するだけだ」

(共同通信)