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原発再エネ「最大限」 エネルギー活用 計画見直し着手


原発再エネ「最大限」 エネルギー活用 計画見直し着手 エネルギー基本計画改定に向けた主な論点
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 経済産業省は15日、エネルギー基本計画の見直し議論に着手した。2050年に温室効果ガス排出量を実質ゼロにする政府目標と人工知能(AI)時代の電力需要拡大を見据え、再生可能エネルギーと原発を「最大限活用」する方向で検討。電源構成目標を盛り込み24年度内に改定する。原発は安全面への懸念から再稼働が進まず、これまで日本が頼った石炭火力発電には国際世論の逆風が吹く。電力の安定供給と脱炭素の両立に向け、難しい判断を迫られる。
 基本計画は3年ごとに検討し、必要に応じて改定する。総合資源エネルギー調査会の分科会で15日に議論を開始した。斎藤健経産相は冒頭で「脱炭素エネルギーへの転換は極めて困難な課題だ。安定的に供給できるかどうかが国力を大きく左右する」と強調した。
 政府は温暖化対策の国際会議に向け、35年ごろの温室効果ガス排出削減目標を25年2月までに決める。並行して脱炭素戦略「GX(グリーントランスフォーメーション)2040ビジョン」も策定する。今回の計画改定は、これらと足並みをそろえ40年度を見据えた電源構成を検討する。
 21年10月に閣議決定した現行計画は、原発を「重要なベースロード電源」と位置付けつつ、東京電力福島第1原発事故の深刻な被害を踏まえ「可能な限り依存度を低減する」と明記。30年度の電源構成目標を火力41%、再エネ36~38%、原発20~22%、水素・アンモニア1%に設定した。
 ただ最新の22年度実績で再エネ比率は22%にとどまり、再稼働が進まない原発も6%で目標との開きがなお大きい。
 岸田政権は22年12月に決めた「GX基本方針」で原発を最大限活用する方針に転換しており、今回の計画改定でどう具体化するかが焦点となる。
 産業競争力を左右するAIの開発拠点や半導体工場は大量の電力を消費し、電力需要は今後増加に転じる見通しだ。政府は原発の再稼働に加え、太陽光や風力といった再エネの導入拡大を目指すが、実現には適地確保や量産化技術の確立が求められる。先進7カ国(G7)は4月の気候・エネルギー・環境相会合で、二酸化炭素(CO2)の排出削減対策がなされていない石炭火力を35年までに廃止することで合意した。