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個人情報漏えい1万3000件 23年度報告 70%増、過去最多


個人情報漏えい1万3000件 23年度報告 70%増、過去最多 年次報告案のポイント
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 2023年度の個人情報漏えい事案が1万3279件と前年度から70%増え、過去最多を更新したことが28日、政府の個人情報保護委員会がまとめた年次報告案で分かった。企業など民間部門で大幅に増加。国の機関に加えて地方自治体が新たに報告義務の対象となり、千件近く集計されたのも総数を押し上げた。企業、行政とも管理体制の不備が露呈し、大量のデータを伴うデジタル社会への対応が追い付いていない実態が浮かんだ。
 報告は6月上旬の閣議決定を経て公表する。内訳は、民間部門が前年度比58%増の1万2120件。国や独立行政法人、地方自治体といった公的部門は10倍の1159件に上り、このうち地方自治体が997件だった。
 事案1件当たりで漏えいした人数は企業、行政とも千人以下がほとんどだった。漏えいしたのは紙媒体が多く、原因は誤送付や誤廃棄など人為的なミスが中心だった。担当者のセキュリティー意識やシステムの甘さが目立った。
 LINE(ライン)ヤフーに対する不正アクセスや、トヨタ自動車が運転支援サービスのクラウド環境の設定を誤っていたケースでは漏えいの規模が大きかった。大手電力が資源エネルギー庁のシステムに接続して新電力の情報を不正に閲覧したケースや、中学受験塾の四谷大塚の元講師が児童の写真とともに個人データを交流サイト(SNS)に掲載したケースも問題視した。
 マイナンバーに別人の公金受取口座を誤登録するミスが相次いだデジタル庁や、マイナンバーカードを使ったコンビニでの証明書交付サービスのトラブルを起こした富士通Japan(東京)の事案を列挙し、マイナンバー制度全体のリスク管理の底上げを促した。
 生成人工知能(AI)サービスの普及をにらみ、病歴など配慮が必要なデータを本人の同意なしに収集しないようにするといった対策の必要性も訴えた。