沖縄県議選に関してヤマトの国会議員、新聞記者、学者からたくさん照会があった。典型的なやりとりを問答形式で記しておく。
問 これで米海兵隊普天間飛行場への移設に賛成する議員が多数派になったので、政府にとってもやりやすい状況になるのではないか。
答 そうは思わない。17日の「琉球新報」は、∧争点となっていた米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡っては、反対する議員が県政与党と中立の公明を合わせて24、推進や容認する野党の自民、中立の維新などが24で同数となった∨と報じている。
問 公明党は辺野古移設に賛成じゃないのか。
答 沖縄は別だ。公明党沖縄県本部は、辺野古新基地建設反対に加え、米海兵隊沖縄県外移設を公約に掲げていて、ブレがない。公明党に関しては東京の本部と沖縄県本部の辺野古新基地建設問題に対する姿勢が異なる。党本部も沖縄県本部に圧力をかけて政策変更を迫るようなことはしない。
問 今後、自民党が東京の公明党本部に対して「沖縄県本を辺野古容認に転換させよ」との圧力がかけられるのではないか。
答 公明党本部が圧力に屈することはないと僕は見ている。公明党の支持母体である沖縄の創価学会が辺野古新基地建設に強く反対している。それに日本全国の創価学会員が平和に対して強い想(おも)いを持ち、沖縄の特殊性を理解し、尊重している。公明党の創立者でもある池田大作創価学会第三代会長が「戦争ほど、残酷なものはない。戦争ほど、悲惨なものはない。だが、その戦争はまだ、つづいていた」との一節から始まる小説『人間革命』を沖縄で執筆したことも創価学会員にとって特別の意味を持つ。辺野古新基地建設問題で沖縄県本の異論を認めるような多様性を持つところに他の全国政党にはない公明党の特徴がある。僕にとってはそれが公明党の魅力だ。
問 沖縄県民は辺野古移設を阻止できないと諦めているのではないか。
答 それも違うと思う。僕の父は東京出身で母は沖縄の久米島出身だ。僕自身は沖縄人と日本人の複合アイデンティティーを持っている。沖縄について論じる時は沖縄人のアイデンティティーの方が強く出る。僕が理解するところでは、沖縄人の特徴は決して諦めないことだ。だから1879年の日本による琉球併合(いわゆる「琉球処分」と沖縄県設置)以後、145年が経(た)つにもかかわらず、沖縄人は日本人との完全な同化に抵抗を示している。僕自身が日本系沖縄人だという自己意識を時の流れと共に深めているのもその一例だ。日本の中央政府は、沖縄が何を主張しようと辺野古新基地移設を強行しようとしている。政治家や官僚だけじゃない。日本人の圧倒的多数もこの問題に無関心だ。沖縄に寄り添う(嫌な言葉だ)「良心的日本人」の「上から目線」も不愉快だ。こういう状況では、じっと我慢している他ないと考える沖縄人が増えたということと僕は受け止めている。僕が尊敬する沖縄初の芥川賞受賞作家・大城立裕先生(2020年逝去)が「佐藤さん、ヤマトとの付き合いは我慢の連続だよ」と言っていたことを君と話していて思い出したよ。
(作家、元外務省主任分析官)