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解雇規制や安保で応酬 小泉、石破氏に質問集中 自民総裁選討論会


解雇規制や安保で応酬 小泉、石破氏に質問集中 自民総裁選討論会
この記事を書いた人 Avatar photo 共同通信

 自民党総裁選に立候補した9人は14日、日本記者クラブ主催の討論会で、解雇規制の見直しを含めた規制改革や外交・安全保障を巡って応酬を繰り広げた。派閥裏金事件への対応や衆院解散・総選挙の時期でも違いが見られた。世論調査で人気の高い小泉進次郎元環境相(43)、石破茂元幹事長(67)への質問が集中した。27日投開票に向け「ポスト岸田」候補の論戦が本格化した。

 小泉氏は出馬表明会見で掲げた解雇規制の緩和に関する具体像を問われ「緩和ではなく見直しだ」と強調。労働市場の流動化が目的だと重ねて説明した。石破氏は整理解雇の4要件をどのように見直すかを含め、早期の条文化を求めた。

 高市早苗経済安全保障担当相(63)は、一般ドライバーが有料で客を運ぶ「ライドシェア」の安全性に懸念を示した。小泉氏は、安全対策を講じつつ移動手段の不足解消に向け全面解禁を目指すと主張した。

 石破氏は、持論の「アジア版北大西洋条約機構(NATO)」創設について「アジアで集団安全保障を模索していくべきだ」と訴えた。茂木敏充幹事長(68)は「欧州と異なりアジアは多様な価値観、体制の国がある」として、非現実的だと批判した。石破氏は理論的には可能だと反論した。

 河野太郎デジタル相(61)は激化する中東情勢に関連し、パレスチナの国家承認を提唱した。上川陽子外相(71)は慎重姿勢を示した。

 政治改革を巡り、茂木氏は幹事長経験を踏まえ政策活動費の廃止が可能だと説明。加藤勝信元官房長官(68)は「廃止は違う費目に行くだけだ」と述べ、政治資金の透明化の重要性を指摘した。

 小泉氏は早期の衆院解散を改めて訴えた。石破氏は国民への判断材料の提示や世界情勢を念頭に「すぐ解散します、という言い方はしない」と語った。

 小林鷹之前経済安保相(49)は、石破氏に「原発ゼロ」の真意を尋ねた。石破氏は、再生可能エネルギーなどの普及を進めれば、原発依存度は下がると応じた。林芳正官房長官(63)は石破氏が唱える「防災省」創設よりも運用体制強化の議論を優先すべきだとした。

自民党総裁選の立候補者討論会で、ボードを手に記念写真に納まる(左から)高市経済安保相、小林前経済安保相、林官房長官、小泉元環境相、上川外相、加藤元官房長官、河野デジタル相、石破元幹事長、茂木幹事長=14日午後、東京・内幸町の日本記者クラブ

夫婦別姓、賛否分かれる

 日本記者クラブ主催の自民党総裁選候補者による討論会では、選択的夫婦別姓制度の是非も焦点になった。小泉進次郎元環境相は法案の国会提出に改めて意欲を表明。上川陽子外相は「個人的には賛成」とした上で、社会の分断を避けるため議論を深めると主張した。小林鷹之前経済安全保障担当相は「旧姓の通称使用が最も現実的だ」として慎重な構えを見せた。

 制度に前向きな候補が首相に就任したとしても、伝統的家族観を重視する自民内の保守系には慎重な議員が多い。法案の党内手続きや国会採決の行方は見通せない。

 小泉氏は「国会議員の考え方の違いを尊重した上で、一人一人の投票行動を決めてほしい」と述べ、法案を採決する際に党議拘束はかけない考えを重ねて示した。臓器移植法が1997年に成立した際や2009年に改正した際、自民を含む多くの党が「個人の死生観に関わる問題だ」との理由で党議拘束を外した例がある。小泉氏は「分断を招くことなく、新しい選択肢を用意する政治を実現する」と意気込んだ。

 制度導入に反対する人物を閣僚に起用できるのかと問われると「人事に言及するのはまだ早い」としつつ「一つの政策で立場が異なっても全体的に協力できる関係性もある」と述べ、問題ないとの認識を示した。

 慎重な立場の小林氏は理由について「家族や兄弟姉妹で姓が異なる家庭が出てくる可能性がある以上、子どもの視点に立って慎重にコンセンサスを得るのが政治の本質だ。早急に決断するのは適切ではない」と力説した。経済界も導入を求めていると聞かれると「社会の根幹を成す制度は経済成長だけで語るべきではない」と述べた。

 上川氏は、自身が結婚して姓を変えた際「アイデンティティーを半分そがれた思いがした」と吐露。導入については「プロセスを深め、時間をしっかりかける態度が必要だ」と訴えた。

政策活動費廃止論相次ぐ

 自民党派閥裏金事件を含む「政治とカネ」の問題を巡り、党幹部に支給され使途公開不要の政策活動費の廃止論が相次いだ。小泉進次郎元環境相は「不透明なお金の使い方を断ち切る。政治改革を断固たる決意で前に進める」と述べ、廃止を主張した。石破茂元幹事長は、事件の説明責任に関し、国民の納得が欠かせないと指摘。関係した議員だけでなく、党総裁が説明を尽くす必要があるとの考えを示した。

 茂木敏充幹事長は、巨額に上る政策活動費について「党勢拡大や調査研究、広報活動を中心に使っている」と説明。党の判断で廃止は可能だと語った。小林鷹之前経済安全保障担当相は「使途を毎年公開する。それができなければ、いっそのこと廃止していい」と語った。

 加藤勝信元官房長官は政治資金の透明化を進めるべきだとしつつ、政策活動費を廃止しても「違う費目に行くだけだ」と主張。使途公開は第三者機関を設置し、相手との関係も考慮した上で判断すべきだとした。

 裏金事件の真相究明に関し、高市早苗経済安保相は「新たな事実が出たら再調査する」と言及。同時に「いったん決まった議員への処分をひっくり返したら独裁だ」と否定した。林芳正官房長官も「新しい事実が判明すれば処分を見直す」と述べるにとどめた。