prime

米軍撤退後「関係より成熟」 沖縄来県の元フィリピン国防相 環境への影響評価参加が重要と指摘


米軍撤退後「関係より成熟」 沖縄来県の元フィリピン国防相 環境への影響評価参加が重要と指摘 インタビューに答えるフィリピンのオルランド・メルカド元国防相=20日、県庁記者クラブ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 県が主催する22日の地位協定関連のシンポジウムに出席するため来沖したフィリピンのオルランド・メルカド元国防相が20日、琉球新報などのインタビューに応じた。米軍の全面撤退を実現させた意義を語ったほか、軍事協力を再構築する中でも、より環境に配慮した措置を取れるようにするなど、現状について説明した。

 上院議員時代の1991年に、在比米軍の駐留延長条約の批准拒否を推進したことで知られる。基地使用の根拠を失った米軍の撤退後、中国が南シナ海への進出を強めたことから、日本国内では批准拒否は「失敗だった」との見方があることに対し「失敗だとは思わない。米国はフィリピンとより成熟した関係を築くことを余儀なくされた」と意義を強調した。

 条約批准を上院が拒否した背景に、米軍基地の負の側面として売春や暴行、米兵が一般の人々を殺害する事例があったことを指摘。「環境コストの問題も無視されてきた」と指摘した。

 冷戦終結で「人々は当時『平和の配当』を求めていた」とも強調。実際に基地の跡地利用で経済的な利益を得ることができていると説明した。

 フィリピンは、中国の海洋進出など情勢の変化に迫られ、米国との軍事協力を再び深める。1998年、出入国や刑事裁判権など訪れる米軍人の扱いを定めた「訪問軍協定」を締結。2014年には「防衛協力強化協定」を結び、フィリピン軍基地の一部を米軍が使用できるようになった。ただ、米軍専用施設は認めていない。比側には米軍が使用する場所を含め、全区域へのアクセスが認められている。

 国防相として訪問軍協定の締結に携わったメルカド氏は、国家間の対立には経済制裁が活発に用いられるようになり、サイバー分野の重要性が増すなど戦争の形も変化しており「恒久的な基地は、空母や原潜で戦力を展開していた時代ほど価値はなくなっている」との見方を示した。

 それでも必要な基地は依然として存在するが「基地が建設されたり、再編成されたりする際には、住民の声を反映させ、環境への影響評価に参加できるようにすることが重要だ」と語った。

(知念征尚、石井恵理菜)