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裏金うやむや最速解散 「石破氏変節」に立民攻勢 衆院選27日投開票


裏金うやむや最速解散 「石破氏変節」に立民攻勢 衆院選27日投開票
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 自民党の石破茂総裁が首相就任後の最速日程で衆院解散に踏み切る。岸田政権から付きまとう派閥裏金事件のくびきを脱しようと本格論戦に意欲を示していたが、失速を恐れる与党内の声に押され、早期解散に慎重な立場から早々と変節した。新執行部人事も長老への配慮が如実に表れ、刷新感は乏しい。与党の過半数割れを狙う立憲民主党は「けじめをうやむやにした」と攻勢を強めた。 (1面に関連)
 「27日に総選挙を行いたい」。30日午後3時、自民党本部4階。石破氏は首相就任前の記者会見では異例の次期衆院選日程に言及した。
 石破氏は元々、総裁選への出馬を表明した8月24日「解散前の予算委員会」開催に触れていた。論客を自負しており、野党との政策論争を有権者に見せるのは決してマイナスではないと踏み、11月以降の投開票も選択肢としていた。
 一方、官邸は岸田文雄首相の意向を受け、新政権発足後すぐ解散できるよう計算し、国会召集を1日にしていた。新味のあるうちに勝負に出れば、裏金事件の逆風があったとしても「ダメージを最小限に抑えられる」(周辺)との判断だ。
 石破氏が9月27日に総裁に選出されると、公明党幹部から早速「解散するなら早い方がいい」と注文が付いた。幹事長に迎えた森山裕氏も「ぼろが出ないうちに解散すべきだ」と主張。論戦に未練を残していた石破氏だったが、腹を決めた。29日夜、重鎮に「9日に党首討論を行い、早ければその日のうちに解散します」と告げた。
 裏金事件の呪縛にあえぐ党の局面転換へ、人事は非主流だった石破氏の腕の見せどころでもあった。だが、ふたを開ければ実力者の麻生太郎、菅義偉両首相経験者と岸田首相への「配慮の塊」(党幹部)となった。
 石破氏は党運営の重しとして、小泉進次郎選対委員長の後見人である菅氏を副総裁に据えた。しかし総裁選の決選投票で、高市早苗経済安全保障担当相の支援に回った麻生前副総裁への「当て付け」(中堅)と見られかねないとの懸念が周囲から上がった。
 そこで29日夕、森山氏が麻生氏を訪ね、岸信介、福田赳夫両元首相も務めた最高顧問への就任を打診。麻生氏は「一体何をしてほしいのか」と渋りながらも承諾した。ただ30日の新執行部の記念撮影には加わらず、早くも溝が露呈した。
 総裁選での「反石破」陣営からは、旧岸田派議員の重用が目立ち、菅氏の影響が色濃い石破氏の人事に対し、3人の名前をもじって「まるで岸破義偉政権だ」(閣僚経験者)との皮肉も漏れる。
 「政治とカネの問題は解明されていない。予算委で審議してから信を問うべきだ」。30日、立民の野田佳彦代表は記者団の前で、石破氏の政治姿勢を酷評した。
 衆院解散について、石破氏は従来、事実上首相が判断する「7条解散」に否定的だったはず。にもかかわらず首相の座が見えた途端、党利党略の解散権行使に走ったと野党の目には映る。
 30日の自民と立民の国対委員長会談では、立民から「言っていることと、やっていることが違うじゃないか」と怒号が飛び、9日までとする臨時国会の会期決定は持ち越された。
 裏金事件を巡っては新たな事案が報じられているが、石破氏は再調査に後ろ向きだ。野田氏は「がっぷり四つで議論したいと思っていたが、逃げるとは思わなかった。臭い物にふたをするための解散だ」と批判した。